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本田圭佑、「持ってる」のは開拓者精神

最近はやや下火だが、ここ数年のサッカー界のはやり言葉に「持ってる」というのがあった。決勝点を決めた選手を指して「あいつ、持ってる」などと言う。2010年ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会で活躍した本田圭佑(ACミラン)が「俺は持ってるな」と発言、のちに出演したテレビCMでも口にしてから本田の"持ちネタ"となった観もある。

本田は何を持っていたのか。それは言わぬが花、ただすもヤボという気分がこの流行語を包んでいたが、その正体がよくわからない。単にツキや幸運に恵まれただけなのか。あるいはツキをわがものとする意志の力、バクチの才のようなものを指していたのか。

本田は大阪・摂津の人。ガンバ大阪のジュニアユースからユースに昇格できず、その立志伝は挫折から始まった。石川・星稜高を経て、名古屋グランパスから欧州へ雄飛。ついにはミランで背番号「10」を背負うにいたった。いっときは「走れない選手」の烙印(らくいん)を押されていたことを思えば、反骨の大出世にひれ伏すしかない。

関西のスポーツ選手は越境というテーマを抱えている。それはしかし、大阪で人気のお笑いタレントが東京に活動の場を移すといったステップアップの形をとるとは限らない。関西圏の激烈な進学争いに敗れた高校球児たちは全国に散り、甲子園優勝という"リベンジ"をもくろむ。

育った地を追われた者が自らの運命を切り開いてゆくフロンティア精神。本田が旺盛に「持ってる」のはこれだろう。米大リーグへと道をつけた野茂英雄氏ら、多くのアスリートがそうであるように。越境はしばしば逆転を生む。彼らに去られ、関西に残るのは「持ってない」人ばかり?

(阿刀田寛)

[日本経済新聞大阪夕刊関西View2014年1月10日付]

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