2019年1月23日(水)

海外の品評会で金賞相次ぎ受賞(次代の創造手)
箕面ビール社長 大下香緒里さん(37)

2014/5/13付
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■「地ビール、ブームでなく文化に」 料理に合ったレシピ考案

世界の地ビール品評会で金賞の常連となり、日本を代表する醸造所となったのが箕面ビール(大阪府箕面市)だ。社長と工場長を兼任する大下香緒里は醸造を指揮するかたわら、全国のイベントに参加して魅力を発信している。料理に合わせて毎日手軽に飲める地ビールのレシピを次々に考案し、先頭を走り続ける。

◎   ◎

3月下旬、同社は1997年4月の醸造開始から1000回目のビール造りを迎えた。樽(たる)に入った記念のビール「みつばち1000ハッチ」はしっかりした苦みの後に国産ハチミツの香りがほんのり漂う。飲食店から注文が相次ぎ、数日間で売り切れた。

「毎日飲んでもらえるビールを造りたい」と話す箕面ビールの大下香緒里社長(大阪府箕面市)

「毎日飲んでもらえるビールを造りたい」と話す箕面ビールの大下香緒里社長(大阪府箕面市)

「地ビールがブームでなく、文化として定着してほしい」。そうした信念から大下は素材や製法を工夫し、数々のレシピを考案してきた。中でも同社の代名詞となったのが黒ビールの一種「スタウト」だ。2009年、英国のビール専門誌が主催する世界的な品評会「ワールド・ビア・アワード」で金賞を得た。

英国はスタウトの本場だ。「品評会で良い成績を目指すなら他のビールを出した方がよい」。周囲からそう言われたが、自分たちがおいしいと思って造ったものがどんな評価を受けるのかを知りたいと考えた。世界への初挑戦で手にした栄冠。「スタウトが一番売れているメーカーは日本でうちくらい」と笑う。

大下がこだわるのはギフト用などではなく、料理に合わせて家庭で楽しめる地ビール。肉やエビの料理には「スタウト」、味噌味の和食には「ヴァイツェン」と5種類の定番を用意し、前菜からデザートまで料理に合わせて選べるようにした。価格も1瓶380円(税別)からと手ごろだ。

箕面ビールは酒販店を営んでいた父の正司が創業した。短大で幼児教育を学んだ大下は卒業後、アルバイト感覚で家業の手伝いを始めた。「ずっとやるなんて思っていなかった」。12年末には父が事故で亡くなり、社長を引き継いだ。

地ビールは95年の規制緩和で製造解禁となり、全国でブームが起きた。大下らも毎日深夜まで働き、目が回る忙しさだった。だがブームは数年で泡のように消え、同社も「何をやっても売れない」状況に陥った。

廃業も考えた大下は製造設備を入れ替える賭けに出る。かつては麦汁を濃縮した半製品を輸入して造っていたが、02年に麦芽の粉砕など全工程に対応した設備を導入。自分たちならではの味の実現に挑んだ。

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定番品のほかにも限定品を2カ月に1度造る。ユズを使った冬場向けの「ゆずホ和イト」は12年、米国の世界最大規模の品評会「ワールド・ビア・カップ」で金賞を受賞。「日本流のスタイルを確立できた」と手応えをつかんだ。

大阪や東京では近年、地ビールを扱う店が広がり、全国で試飲会を開くメーカーも増えた。5月には難波で関西のメーカー21社が「クラフトビアライブ2014」を開く。頻繁にイベントに参加する大下は従来と違う広がりを感じる。

ビールは製法や素材によって100種類に分かれる。「30種類も造ってないけど死ぬまでに制覇したい」。地ビール文化の普及にかける大下の挑戦は続く。=敬称略

(大阪経済部 越川智瑛)

■ばっくぼーん 地ビールのブームが下火になって苦しかったころ、国税庁が主催していた醸造の研修に参加しました。発酵の原理などの根本的な部分から学ぶことができ、ビール造りで分からないことを聞ける仲間ができたのは大きな支えになっています。
 今でも年に1~2回は同期会が開かれています。同期のなかには日本酒の酒蔵で後継ぎとして育ってきた同世代の人もいました。その使命感の強さに接して、前向きな気持ちでビール造りに取り組むようになりました。
 今年は山梨県でワイナリーを開く同期と一緒になってホップの栽培にも挑戦します。数年後に国産ホップを使ったビールを造るのが夢です。

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