性的少数者の職場の悩み代弁(次代の創造手)
NPO法人虹色ダイバーシティ代表 村木真紀さん(39)

2014/7/10 6:30
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■「声上げられぬ当事者いるはず」 企業や自治体・大学で講演

同性愛者や性同一性障害など性的少数者が働きやすい環境を整えたい――。NPO法人「虹色ダイバーシティ」(大阪市淀川区)の代表を務める村木真紀の願いだ。職場で悩み続けた自身の体験を交え、安心して働ける環境づくりを企業や自治体に訴えている。

◎  ◎

「当事者が『いない』のではなく『言えない』ことを知ってほしい」。6月下旬、大阪市内の住友生命の本社で開かれた社内研修で、講師を務めた村木は強調した。「冗談のつもりでも『ホモじゃないのか』などと揶揄(やゆ)することは当事者にとって大きな圧力」と語ると、約60人の課長級の職員は真剣な表情でメモを取った。

性的少数者が過ごしやすい社会にするため、企業で講演する村木さん(大阪市中央区)

性的少数者が過ごしやすい社会にするため、企業で講演する村木さん(大阪市中央区)

高校時代、女性を恋愛対象と考える自分に気付いた。大学卒業後、飲料会社に入ったが「カミングアウト(告白)なんてできなかった」と振り返る。わだかまりから同僚と打ち解けられず転職したが、性的少数者に差別的な発言を繰り返す上司もおり、悩みは続いた。

転機は過労で体調を崩し、不信感を抱いていた上司に相談もできず休職していた時。英国の人権団体のホームページに見付けた悩みが自身の経験と重なり「自分だけの問題ではない」と気付く。

「性的少数者が告白できればやりがいが向上し、生産性が高まる」。人権団体のパンフレットを基に法整備や教育体制が遅れている日本の状況をネットで紹介。日本からも「自分も職場で息苦しい思いをしている」という声が集まった。

◎  ◎

電通総研が2012年に20歳以上の約7万人に実施したインターネット調査では、性的少数者が5%と20人に1人を占めた。「声を上げられない当事者はいるはず。日本の職場を変える必要がある」。仲間2人と虹色ダイバーシティを任意団体として同年に設立、翌年にNPO法人化した。

村木らが今年初め、性的少数者を調査したところ、回答した約1200人の7割が「職場で差別的な言動がある」とした。今月施行の男女雇用機会均等法に基づくセクシュアルハラスメント指針改定の議論では厚生労働省が初めて「性的少数者も職場における指針の対象」との見解を示した。だが「どうすればいいのか」との困惑は根強い。

村木は自身の経験を踏まえ「社内で相談できる体制作りが第一歩」と語る。「同性婚などが認められている海外の国では企業の理解が不十分だと事業や人事でトラブルに発展する恐れもある」。管理職研修などを通じ意識を変えるため、事業主向けに小冊子も作った。

昨年9月には大阪市淀川区が「性的少数者に配慮した行政を目指す」と宣言した。同区主催の講演会に参加した住友生命の担当者から講演を依頼されるなど、企業や自治体の理解は徐々に高まってきた。

6月中旬には関西大学(大阪府吹田市)の職員に講演した。「『更衣室やトイレで対策を講じてほしい』など、性的少数者からの相談が1年ほど前から増えたため」と同大学の人事課担当者は説明する。

「関心は確実に広がっている。今は理解の種をまく時期」。多くの人々が理解してくれる社会を願い、何度でもアピールを続ける。=敬称略

(社会部 西城彰子)

〈ばっくぼーん〉 コンサル時代の知識が支え
 子供の頃から好奇心やチャレンジ精神が旺盛で、だれもやっていないことを一番乗りでやることが大好きでした。大学も新設学部に入学し、第1期生として卒業しました。
 会社でホームセンターの新規出店を担当したことで、事業を立ち上げる楽しさを経験しました。その後、外資系のコンサルタント会社で働き、「トップの企業が取り組めば業界全体に広がる」ことなどを学びました。
 性的少数者への支援を企業などに呼びかける活動も、チャレンジ精神とコンサル時代の知識が支えになっています。見た目には分からない性的少数者の問題をだれもが理解しやすようにデータを示して伝えようと思っています。
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