肺がん治療薬「イレッサ」の副作用被害を巡り、西日本の患者1人と死亡患者3人の遺族が国と製薬会社「アストラゼネカ」(大阪市)に計1億450万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、大阪高裁(渡辺安一裁判長)は25日、ア社の賠償責任を認めた一審・大阪地裁判決を取り消し、請求を全て棄却する原告逆転敗訴の判決を言い渡した。原告側は上告する。
同種訴訟では、昨年11月の東京高裁判決も国とア社の責任を否定。高裁レベルで原告敗訴が続き、被害救済を求める原告側にとって厳しい状況となった。
訴訟は、患者らが発症した副作用の間質性肺炎について、輸入販売が承認された2002年7月当時の医療機関向け添付文書による注意喚起が適切だったかどうかが最大の争点となった。
渡辺裁判長は判決理由で、承認当時、国内外の治験などで間質性肺炎が発症した19例中、イレッサと死亡との因果関係が比較的明確といえるのは1例だけで「死亡に至る副作用まで予測するのは困難だった」とした。
当時の添付文書には警告欄がなく、間質性肺炎は「重大な副作用」欄の最後に記載されていたが、「担当医は肺がん治療を手がける医師であり、重大な副作用欄を読めば、危険性を認識できた」と指摘。添付文書の指示・警告に製造物責任法(PL法)上の欠陥はなかったと判断した。
国の責任についても「前提となるア社の責任がない」と否定した。
昨年2月の一審・大阪地裁判決は、国への請求を棄却する一方、間質性肺炎について「致死的」と警告欄で注意喚起すべきで、添付文書の指示・警告に欠陥があったとし、ア社に約6千万円の支払いを命じていた。
東日本の死亡患者3人の遺族が同様に起こした訴訟では、国とア社の責任を認めた一審・東京地裁判決を、二審・東京高裁判決が取り消して原告の請求を全面的に退けた。原告側は上告している。