市の「選択制」に現実味 成績公表、序列化の懸念も
学校に吹く風 大阪改革の行方(3)

2012/3/23付
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全国の自治体で導入の相次ぐ公立小中学校での学校選択制。2014年度の実現を目指す大阪市は今年3月から3カ月間の日程で保護者らの意見を聞く「学校教育フォーラム」を全24区で開く。第1弾となった20日の淀川区では200人を超える区民らが集まった。

大阪府は2011年度、府内の小中学生を対象に独自の学力テストを始めた

大阪府は2011年度、府内の小中学生を対象に独自の学力テストを始めた

橋下徹市長は市長選で学校選択制を公約に提示。小学校の場合は居住地の校区と隣接の校区から通学先を自由に選び、中学校ではブロック化した数区から選択するという内容だったが、詳細な制度設計はこれからだ。

■全国で14%導入

「学年の途中で転校できるのか」「学校と地域との関係が薄くなる懸念はないか」。参加者の質問に、登壇した金谷一郎区長らが先行事例のメリットやデメリットを説明したが、「導入が前提ではない。まずは制度を知ってほしい」とかわす場面もあった。

現行制度の見直しに賛成という地元小学校PTA会長の自営業、吉村隆訓さん(44)は「導入ありきの形式的な議論に聞こえた。早く具体像を知りたい」と注文。小学生の2児がいる母親(36)は「『選択による競争を』との市長の発想は分かるが、義務教育はどの学校も等しく教育の質を保ってほしい」と話す。

文部科学省の全国調査(06年度)では学校選択制を導入した自治体は小中学校とも約14%。「学校側が選ばれる意識を持ち、特色づくりや活性化につながる」(東京都世田谷区)と評価する声がある一方、人気校への児童や生徒数の偏りが大きくなり、見直しに踏み切る自治体も出ている。

■前橋市では廃止

前橋市教育委員会は11年度、7年間続いた選択制を原則廃止。自宅から6キロ以内の中学校を選べる仕組みにした結果、新築校舎のある一部学校などに生徒が流れ、逆に減った学校では部活動の継続が困難に。「特色づくりに効果があったかどうか検証もできなかった」(市教委)

橋下市長が描く選択制が他地域と決定的に異なるのは学校の「成績」の公表が絡んでいることだ。制度導入に合わせ、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の学校別成績を公表する考えを示しており、情報公開請求に基づかない学校別の公表は全国初になる。

学力テストの成績が低迷してきた大阪。府教育委員会によると、これまで府内の学校別平均正答率で上位と下位で最大約40ポイント、同じ市町村内でも最大30ポイントの差が生じた。府教委幹部は「学校間の学力の違いは想像以上に大きい」と指摘する。

「点数が低かったら金を投入し、人も送り込んで点数を上げればいい」。府知事時代から公表の必要性を唱えてきた橋下市長は「全学校の開示が必要かというと、疑問がある」として情報提供のあり方を慎重に探る方針だが、学校の序列化を心配する声は消えない。

学力テストの制度設計に携わった耳塚寛明お茶の水女子大副学長(教育社会学)は「学校に関する情報を発信することは大切だが、学校別の平均正答率を公表しても教育の質の指標にはならない。成績の伸び率や学習以外の特色を幅広く伝えることが学校選択に資するはずだ」としている。

4月には選択制導入に向けた市教委の検討会議「熟議・学校選択制」が発足。市民を含む約20人が9月をメドに案をまとめ、導入の可否も含めた最終判断は8月にも誕生する公募の区長が各区で決める見通しだ。

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