[FT]大手ヘッジファンド各社、円売り介入で打撃 - 日本経済新聞
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[FT]大手ヘッジファンド各社、円売り介入で打撃

(2010年9月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

政府・日銀による外国為替市場への予想外の円売り・ドル買い介入は世界最大級のヘッジファンドに驚きを与え、各社は円の急落により大幅な損失を被った。

日本の財務省が6年ぶりの市場介入を明らかにしたことを受け、15日の円相場は15年ぶりの高値となった1ドル=82円88銭から3%以上下落し、今年最大の下落幅を記録した。

予想外の動きに弱い「アルゴリズム取引」

ファンド各社の運用成績に詳しい関係者によると、英資産運用会社マン・グループが経営する運用資産210億ドルのファンドAHL、50億ドルのウィントン・キャピタル・フューチャーズ・ファンド、10億ドルのアスペクト・ディバーシファイド・ファンドなどの英ヘッジファンド各社はすべて、円に対し強気のポジションをとっていたため損失を出したという。

3社はすべて市場動向を自動的に判断して注文を出す「アルゴリズム取引」を採用しているため、各国政府や中央銀行による突然の介入など予想外の動きに弱い。3社以外にもグローバル・マクロ戦略(経済動向を分析して投資先を選定する方法)をとるヘッジファンドや為替取引の専門家などが今回の介入で打撃を受けたとみられる。

円の上昇傾向が続いたため、アルゴリズム取引を行うヘッジファンドは8月に巨額の運用益を上げた。だが9月はそう単純ではなくなりつつある。

「日本政府の介入で通貨市場が混乱」

ある投資家によると、AHLは8月に6.8%の運用益を上げ、ウィントンの主力の先物ファンドでの運用益は5%弱だった。

あるファンドマネージャーは「日本政府の介入により通貨市場全体が混乱した」といら立ちをみせつつも、「市場が再び沈静化するにはおそらく1週間かかるが、(今回の介入による)恒久的な影響については全く心配していない」と述べた。

日本政府の追加介入に懸念を強めるファンドもあるものの、多くのファンドマネージャーは円が強い基調を維持しているため既に損失を取り戻している。菅直人首相は16日、必要ならば政府は円の下落に向けさらに「断固たる措置」をとる用意があると強調した。

あるブローカーによれば、運用者の判断で売り買いをする自己裁量取引をするトレーダーらは、追加介入やその恐れを契機にコンピューター分析に基づくシステム取引を断念するファンドが現れるかどうかに注目している。

円買いのチャンスとなる可能性も

いずれにしても、日和見的な短期売買戦略をとる一部のヘッジファンドは今回の日本政府の介入にチャンスを見いだしている。

政府が追加介入に踏み切っても市場の動向を変えられない場合には、円買いのチャンスとなる可能性があるためだ。

あるグローバル・マクロ・ヘッジファンドのトレーダーは「今回のような市場操作が常に成功するとは限らない。もし介入時期を間違えれば、トレンドを戻すどころか悪化させてしまう」と指摘した上で、「1992年に英国に起こったことを思い出してほしい」と述べ、英国がポンド危機で欧州通貨メカニズム(ERM)離脱に追い込まれたことに言及した。

By Sam Jones

(c) The Financial Times Limited 2010. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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