2018年8月15日(水)

[FT]国家主義的傾向強める安倍首相(社説)

2014/2/10 15:00
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 日本経済の活性化を目指す大胆な戦略である安倍晋三首相の「アベノミクス」の陰には台頭する中国の脅威がある。そもそも自民党の関心が安倍氏に向かい、国民の多くが選挙で同氏を支持したのは、拡大する中国の影響力への懸念が理由だった。安倍氏が、15年に及ぶデフレを根絶し、経済力の向上を追求するのも同じ危機感からだ。

衆院予算委で発言を求めて挙手する安倍首相(10日午前)

衆院予算委で発言を求めて挙手する安倍首相(10日午前)

 同氏は、歴史修正主義の立場から、日本は戦時の残虐行為を巡り不当に批判されてきたと考えているが、これまでは経済運営を優先してきた。ただ、就任後1年が過ぎ、少なくとも2016年まで政権の安定が予想される今、国家主義的な政策を前面に押し出し始めている。

 安倍氏は2013年12月、米国政府の忠告や外交上の懸念を無視して靖国神社を参拝。その結果、中国との関係改善の見通しが大きく後退、韓国とも緊張が高まっているようだ。靖国参拝の前には、過度に厳しい特定秘密保護法案を成立させている。

 この政策に対する懸念は、官邸が影響力を持つNHKのトップ人事でさらに強まった。会長に指名された籾井勝人氏は12月の就任記者会見で「政府が右ということを左というわけにはいかない」と発言し、多くの関係者を驚かせた。

 また、同氏は従軍慰安婦問題を「戦場地域にはどこの国にもあった」などと発言、その後撤回したものの、大きな波紋を呼んでいる。さらに、安倍氏が任命した別の経営委員が「南京大虐殺はなかった」などと述べ、事態を悪化させた。原子力の利用が焦点となった東京都知事選を前に、NHKは原子力業界に対する批判の抑制を図ったようにもみえる。自民党は基本的に原発推進を支持する立場だが、11年に起きた東京電力福島第1原発の事故を受けて国民は警戒感を強めている。

■議論の機会を狭めようとする安倍氏

 安倍政権は公の議論の幅を狭めようとしており、中国の日本批判はそれを後押ししている。米世論調査機関ピュー・リサーチ・センターが最近行った世論調査では、中国に肯定的な印象を持つ日本人はわずか5%にすぎないことが分かった。国民の多くが受け身で、意見を主張しない日本では、世論を操作しようとする安倍氏の政策は危険だ。

 日本にとって議論すべき課題は多い。「集団的自衛権」の解釈を変更し、同盟国などが攻撃された場合、自国への攻撃と見なして反撃できるようにするのはその一つ。およそ世界に類を見ない戦争放棄を定めた憲法9条の改正も議論が必要だろう。安倍氏にとって不都合なのは、国民の大部分が戦後の平和主義を支持しており、同氏のように保守的ではないということだ。安倍氏は、議論の機会を減らすことで、自身に好ましい方向に世論を向かわせようとしているようだ。

 安倍氏は日本の近隣諸国にとって脅威だとする中国の主張はおおむねばかげているが、同氏の政策は日本自身を脅かしかねない。中国の脅威が口実にされ、日本の開かれた社会がたたかれればこれ以上の悲劇はない。

(2014年2月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2014. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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