独バイエル、1.4兆円で米メルクの大衆薬事業を買収
【フランクフルト=加藤貴行】独製薬・化学大手のバイエルは6日、米製薬大手メルクの一般用医薬品(大衆薬)などコンシューマーケア事業を142億ドル(約1兆4500億円)で買収すると発表した。バイエルは買収で事業規模を74億ドルに拡大し、扱う製品群や得意な地域での相乗効果を引き出す。欧米製薬大手が得意領域を絞り込む動きが加速してきた。
業界では4月に英グラクソ・スミスクライン(GSK)がノバルティス(スイス)との大衆薬事業の合弁化などで合意。GSKは合弁会社に63.5%を出資し、売上高の単純合算は100億ドルに達する。業界最大手の米ジョンソン・エンド・ジョンソン(147億ドル、13年12月期)を、欧州勢のGSKとバイエルが追撃する構図ができあがった。
メルクのコンシューマーケア事業はアレルギー治療薬「クラリチン」や日焼け止め「コパトーン」、足のケアブランド「ドクター・ショール」などを抱える。2013年12月期の事業売上高は約22億ドルで7割は米国内だった。
バイエルの大衆薬事業は看板の鎮痛剤ブランド「アスピリン」や皮膚薬「ベパンテン」などを手がけ、世界各地に販路を持つ。今年後半に買収を終える予定で、買収後は皮膚薬や胃腸薬の分野で最大手になり、北米の大衆薬市場でも首位に立つという。メルクの製品群を世界各地の販路で扱い17年までに4億ドルの増収効果を引き出し、事業統合で2億ドルのコスト削減も進める。
一方、メルクは事業再編で処方せんが必要な医療用医薬品に経営資源を絞り込む。同時にバイエルの肺高血圧症治療薬の開発で協力し、新薬の開発や販売状況に応じてバイエルに最大10億ドルを支払うことでも合意した。
バイエルのマライン・デッカーズ社長は同日、「メルクの事業買収で製品群や地域を補える」と説明した。同社長はかねて「大衆薬で世界首位をめざす」と公言しており、一段のM&A(合併・買収)に動く可能性もある。
バイエルの日本法人は国内で解熱鎮痛薬「バイエルアスピリン」を大衆薬メーカーに供給している。メルク日本法人のMSDは国内で大衆薬事業を手がけておらず、アスピリンの供給体制に変更はない見通しだ。