米HPのパソコン分離、市場はノー 株価20%安
金融機関が「バッシング」

2011/8/20付
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【ニューヨーク=小川義也】パソコン(PC)事業分離検討などを打ち出した米ヒューレット・パッカード(HP)の株価が19日急落し、前日比20%安の23ドル60セントで引けた。同日のダウ工業株30種平均株価の下げ幅約172ドルのうち、約45ドル分がHP株下落の影響だった。事業改革の金融機関時期、費用、実行力などを市場が疑問視したためだ。「企業のリストラ発表は買い」という株式市場の常識が通用しなかったのはなぜか。

HPは18日の米株式市場終了後に事業構造改革を発表。一夜明けた19日、米ウォール街はHP"バッシング"で反応した。

ドイツ銀行はHP株の投資判断を「中立」から「売り」に、クレディスイスは目標株価を、モルガンスタンレーは業績予想をそれぞれ引き下げた。米格付け会社もムーディーズ・インベスターズ・サービスは格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に、スタンダード・アンド・プアーズも格付けを引き下げ方向で見直すと発表した。

収益性が低く成長が鈍化しているPC事業を分離し、高収益の企業向けIT(情報技術)サービスやソフト事業に経営資源を集中するという戦略の「方向性は正しい」(クレディスイス)という見方は多い。にもかかわらず、株が売り込まれた背景には3つの懸念がある。

1つはタイミング。同時に発表した5~7月期決算の中で、HPは2011年10月通期の業績見通しを引き下げた。主力のPC事業は米アップルの「iPad(アイパッド)」などタブレット端末との競争激化で成長が鈍化。力を入れる企業向けサービス事業も、利益率の低下が見込まれている。

世界景気の減速懸念が強まる中で、最大1年半もの時間をかけて事業構造を大きく見直すのは、その間の事業運営に「大きな混乱」(ドイツ銀行)をもたらし、業績を一段と下押しするとの懸念がある。

2つ目はコスト。PC事業の分離検討と同時に発表した英ソフト会社オートノミーの買収額は102億ドル。企業向けソフト事業の強化につながる買収そのものは好意的に受け止められているものの、売上高約9億ドルの会社に10倍以上の値段を付けたことには、「高い買い物」との声が多い。

そして最後は実行力。就任10カ月目のレオ・アポテカー最高経営責任者(CEO)は、05年にPC事業を中国のレノボ・グループに売却し、高収益の企業向けサービス・ソフト事業に集中した米IBMの例を参考にしている。だがこの6年でPC事業の市場価値は大幅に低下している。分離するにせよ売却するにせよ、狙い通りの成果が得られる保証はない。

今週の米IT業界では、モトローラ、HPなど名門老舗企業が相次ぎ経営戦略の抜本転換に踏み出した。新陳代謝が激しい米IT業界ならではの動きだが、資本市場を説得できなければ改革も絵に描いた餅に終わりかねない。事業構造の転換を迫られる日本のIT関連企業にも重い教訓を残している。

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