2019年8月20日(火)

資本の危機は未解決、消えぬ欧州不安(NY特急便)
米州総局・川上穣

2011/9/16付
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「ドルの流動性を供給する協調行動は、高く評価できる」(米調査会社ハミルトニアン・アソシエーツのディノ・コス氏)。米ブルームバーグが15日、ニューヨーク市内で開いた金融会合。日米欧の主要中央銀行がドル資金を無制限に供給するとの合意内容が伝わると、会場では安堵の声が漏れた。

15日のダウ工業株30種平均は前日比186ドル高と4日続伸した。ドル資金の調達に苦しんでいた欧州の金融株が急上昇し、米市場でも買い安心感が広がった。

会合に集まったのは米金融界を代表する50人。欧州問題の行方が、参加者の関心の中心を占めた。主要中銀の決定を評価する一方で、債務不安の長期化を懸念する意見も多く出された。

「流動性の危機は回避できても、資本の危機は解決されていない」。米ダートマス大学のブランチフラワー教授が語った。値下がりの激しいギリシャ国債を保有する仏銀などが資本の増強を迫られるのは必至。

欧州金融安定基金(EFSF)の機能を拡充し、公的資金を注入すべきだとの意見も出た。だが、次々と控える危機の処方箋は見えてこない。

この日、最も注目を集めた人物がいる。世界最大級のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエーツ最高経営責任者(CEO)のレイ・ダリオ氏だ。

短期的な売買で利益を上げる手法ではない。徹底した分析に基づいて世界がどう動くかを予測し、株式や為替などあらゆる資産に投資する。旗艦ファンドは1991年の設定以来、平均で年率15%の運用利回りを稼いできた。

そのダリオ氏が欧州について言及した。「(欧州の当局者は)十分に質の高い議論を何もしていない」。財政統合や公的資金の必要性を認識しながら、問題を先送りする欧州の対応をやんわりと批判。

ダリオ氏の旗艦ファンドは欧州に弱気のポジションを取る。金やスイス・フランの買い持ちなど投資マネーの「質への逃避」を先取りし、旗艦ファンドは今年の投資収益が2割を超える。

ギリシャ、スペイン、イタリアなど放漫財政を続けてきた国々を抱える欧州の根は深い。ユーロ圏は10年単位で景気低迷が続くというのが持論だ。

財政悪化が著しい米国も他人のことは言えない。だが「(基軸通貨の)ドルをいくらでも印刷できる」点において、欧州よりも状況はましだと語った。

ダリオ氏は圧倒的な債権者である新興国が、借金を積み上げる先進国を凌駕する未来を描く。世界の国内総生産(GDP)に占める新興国の比率は今が5割弱。それが15~20年後には7割に達するのだという。

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