2018年7月22日(日)

「最強」アマゾンが変える業界ルール(NY特急便)
米州総局・川上穣

2013/1/9 8:59
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 8日のダウ工業株30種平均は前日比55ドル安と続落した。米主要企業の決算発表を目前に、様子見ムードが強まった。今週は上値の重さも目立つが、そんな中で株価が絶好調な銘柄がある。インターネット通販最大手の米アマゾン・ドット・コムだ。

 8日こそ小幅に反落したものの、前日に上場来の高値を更新したばかり。過去1年で株価は約45%上がっている。上昇率はIT(情報技術)業界の雄、アップル株(同24%)の実に倍近い。

 スマートフォン(スマホ)の爆発的な普及もあり、消費者が気軽にインターネットで買い物をする時代。その恩恵を最大限に受けているのがアマゾンだ。「世界のネット通販の拡大でアマゾンは絶好の位置に付けている」。ある米投資銀行は今週、アマゾンの2016年度の売上高が1660億ドルと、11年度の3.5倍に急増するとの予測を公表した。

 店舗がないため販売員を持たず、運営コストは安い。利益を犠牲にしてでも売り上げを徹底的に追い求める姿勢は、他の追随を許さない。世界経済の成長鈍化もあり、売上高の急拡大が見込める米企業はそれほど多くない。だからこそ、グロース(成長)株の筆頭であるアマゾンには潤沢なマネーが流れ込む。

 アマゾンの台頭で、米小売業界は経営戦略の変更を迫られている。ディスカウント大手ターゲットは8日にネット通販の対抗策として、最低価格保証サービスを通年にわたって導入すると発表した。

 アマゾンなど主力のネット通販業者が提示する最安値まで実際の店舗で値引きするというもの。自分の身(利益)が削られるのを覚悟で、ネット通販への顧客の流出を防ぎたいとの思いがにじむ。

 減税の失効などが重なる「財政の崖」問題が重荷となり、昨年の年末商戦は苦戦した。だがオンライン販売に限れば、売上高が前年より2ケタ以上増えたというデータもある。

 こうした時代の変化に取り残された小売企業は、一段と追い詰められている。大手シアーズ・ホールディングスは7日、ダンブロシオ最高経営責任者(CEO)が2月に退任すると発表した。家族の健康状態を理由にしているが、IT業界出身で期待を集めた同CEOでさえ、業績を立て直すことはできなかった。

 今後は同社株の過半を握る米投資家ランパート氏が、自らCEOに就任するという。だがリストラモードが続くシアーズがいつ反転攻勢に転じるか、展望はまったく見えない。

 携帯電話市場ではアップルの台頭がノキアの衰退を招いた。米小売業界でもアマゾンを軸に同様の現象が起きる。新たなデジタル時代が、長年続いた業界のゲームのルールを変える。米小売業界は今、その地殻変動のただ中にある。

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