ソロス氏の警告「ユーロ崩壊、猶予は3カ月」(NY特急便)
米州総局・川上穣

2012/6/5 8:35
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週明け4日のダウ工業株30種平均は4日続落し、年初来の安値を付けた。値ごろ感による買いも入ったが、4月の米製造業受注額が市場予想に反して前月に比べ低下したことを嫌気した。

先週末の5月の米雇用統計ショックを受け、世界の株式相場は一段と水準を切り下げた。ただ、世界の運用最大手米ブラックロックのボブ・ドール副会長は「米景気よりも欧州問題が、世界の金融市場の最大のリスクであることに変わりはない」と強調する。米財務省も4日、欧州当局者に危機対応の加速を求める声明を出した。

「私の判断では、欧州当局者に残された時間はあと3カ月だ」。先週末2日のイタリア北部トレントの金融会合。米著名投資家ジョージ・ソロス氏による講演が、週明けの米市場の話題をさらった。ユーロ圏の崩壊を避けることは、盟主ドイツにもプラスになると明確に指摘していたからだ。

17日のギリシャ再選挙は緊縮財政の維持派がかろうじて勝利し、ユーロ圏の離脱は避けられる。だが、ギリシャ問題は今秋にも再び深刻になりそうで、この局面では欧州の中核国にも支援の余裕がなくなっている。時間稼ぎはもう許されない。危機回避には今しかないと訴えた。

運転席に座っているのは盟主ドイツだ。そのほかのユーロ圏の加盟国にとって、ドイツの何らかの支援を得ずに自律的に問題を解決できる局面はとうに過ぎている。

ギリシャ離脱などで「負け組」を切り離し、ユーロ圏を「勝ち組」を中心とした通貨統合に変えていくという議論もある。しかし、ソロス氏はその代償はほかならぬドイツにとって大きすぎるとの立場を取る。

問題なのは、ドイツの銀行が保有する財政不安国向けの債権が紙くずになるリスクだけではない。ユーロ圏には「ターゲット2」と呼ばれる中央銀行間の決済システムが存在する。

債務危機が深まる過程で、ドイツ連銀からは大量のマネーが南欧諸国に流れ込んでいる。ユーロ圏の崩壊という最悪の事態になれば、他国に流れた資金が回収できなくなる恐れも出てくるという。

ソロス氏は解決の処方箋として(1)欧州安定メカニズム(ESM)を通じ域内の銀行への直接的な資本の注入(2)預金の流出を防ぐための「欧州預金保険機構」などを挙げる。いずれも真新しい案ではないが、市場を安心させるだけの十分な規模を確保する必要があるとくぎを刺した。

6月は欧州危機を巡って決定的に重要な月になる。利下げ観測も浮上する6日の欧州中央銀行(ECB)理事会、17日のギリシャ再選挙、そして28~29日には欧州連合(EU)首脳会議を控える。

ドイツはどこまで決断できるのか。危機の深まりとともに、ユーロ圏の盟主の「覚悟」が世界の金融市場の行方を決定づけることになりそうだ。

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