[FT]アベノミクスの本当のリスクは「行き過ぎ」

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2013/6/3 7:00
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(2013年5月31日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

5月第4週までは、アベノミクスの中核を成す浮揚策が完璧に機能しているように見えた。バブル期の典型的な尺度であるゴルフ会員権は値上がりした。株式市場も上昇し、半年間の上げ幅が70%に上った。家庭向けの電気料金も値上がりした。言い換えると、資産価格の上昇と現実世界のインフレがついに定着するかに見えた。

トレーダーの執務室にある画面に映し出される円ドル相場(5月23日)=AP

トレーダーの執務室にある画面に映し出される円ドル相場(5月23日)=AP

だが、今の日本は奇妙だ。日銀の一部関係者は、2%という物価上昇率の目標は野心的過ぎて達成できないのではないかと心配している。市場は、今も昔も日本にとって唯一の成長エンジンである輸出の本格回復をもたらすほどには円安が進まないかもしれないと懸念している。

しかし、量的緩和の「修正」に関する米連邦準備理事会(FRB)のベン・バーナンキ議長の最近の発言を受け、日本の株式市場と国債市場が大揺れしたことは、正反対のことを心配すべきだということを示唆している。アベノミクスの本当のリスクは、インフレと円安が十分に進まないことではなく、行き過ぎることなのだ。

多くのアナリストは、政策変更に関する議論は早計だと思っているが、FRBの資産購入の段階的縮小について考えただけでも、株式相場は急落した。米国の量的緩和の縮小は、日本とアジア新興国の金融市場と実体経済に影響を与える。

■デフレとゼロ金利以上に悪いもの

FRBが実際に緩和策を縮小し、米国経済が強くなれば、ドルは急騰する可能性が高い。つまり、円は急落するということだ。大幅な円安になれば、2%という目標以上に輸入コストが高くなる公算が大きくなる。そうなれば、金利が大幅に上昇し、アベノミクスの中心に存在する矛盾を浮き彫りにする。すなわち、インフレ率の上昇と超低金利を両立させるのは不可能だ、ということだ。

日本は間もなく、デフレとゼロ金利以上に悪いものが存在することに気付くかもしれない。悪いインフレと高金利である。脆弱性の最大の原因は、もちろん、輸入エネルギーに対する依存だ。すべての輸入財の価格はドル建てになっているため、コストが大幅に上昇し、円安によって輸出業者が得る競争上の恩恵を少なくとも部分的に帳消しにする。

だが、非正規労働者の割合が高まっている労働市場の構造を考えると、賃金が物価と比例して上昇することはないだろう。このことは、多くの人の生活水準が下がり、消費が拡大したとしても一時的な動きで終わることを示唆している。不動産価格と株価の上昇による資産効果は、大半の労働者、特に年配の労働者には何の影響も及ぼさない。

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