/

2012年も続く「ユーロ」の試練 危機対応、綱渡り

2009年末のギリシャの財政危機の表面化から2年あまり。ユーロ圏の政府債務危機がおさまる気配はなく、12年もこの問題は世界経済の重荷になりそうだ。秩序なき債務不履行(デフォルト)など市場の混乱を避けながら、中長期の域内財政連携、成長力を高めるための構造改革を断行できるかどうか。単一通貨維持を目指すユーロ圏の綱渡りは続く。

不安抱え越年

11年最後の1週間も市場関係者の関心は「ユーロ」だった。

12月28~29日にイタリア政府が実施した国債入札。平均落札利回りは前回入札を下回り、何とか息をつないだが、10年債の平均落札利回りは6.98%と「危険水域」とされる7%に近い。

30日の年内最後の閣議後にスペイン政府は11年の財政赤字が目標の国内総生産(GDP)比6%におさまらず、約8%になると発表した。発足間もないラホイ政権は、市場の信認をつなぎとめる財政再建策を進めながら、景気低迷、雇用悪化にどう対応するかという難題を抱える。

年内最後の30日のニューヨーク外国為替市場での取引でもユーロは売りこまれ、対円では一時99円47銭と00年12月以来、11年ぶりのユーロ安・円高水準をつけた。ユーロは不安を抱えながらの年越しとなった。

11年も欧州の首脳たちは危機対応の緊急協議を繰り返した。その決定版として打ち出した12月8~9日の首脳会議の対策も市場の評判は芳しくない。「市場の不安→首脳会議で対策→いったん小康状態→不安再燃」という悪循環はまだ断ち切れそうもない。

短期の市場不安を抑える対策として、(1)欧州金融安定基金(EFSF)の拡充(2)国際通貨基金(IMF)を通じた安全網創設(3)常設の欧州安定メカニズム(ESM)の創設前倒し――を打ち出した。だが、IMF活用の安全網への欧州連合(EU)の拠出額は当初予定の2000億ユーロには届かない見込みだ。EFSFとESMの合計で5000億ユーロという融資能力上限の引き上げも、ドイツの反対などでもめている。

仏が台風の目

政府サイドの安全網強化が遅れるなかで、緊急対応は欧州中央銀行(ECB)頼みが続きそうだ。ECBは11年12月、欧州銀行向けに3年間にわたって低い金利でお金を貸す対策を始めた。初回の21日には4890億ユーロ(約50兆円)もの資金を貸し出した。

金融機関の資金繰り不安を鎮める効果は出ているが、各国政府が期待するように、銀行がECBから借りたお金でユーロ圏の国債を買うかどうかは未知数だ。

確かに銀行は1%台の金利でECBから資金を借りて、5~7%台の国債で運用すれば利ざやを稼げる。だが、銀行が将来の元利払いに不安を抱けばどんどん国債を買うわけにはいかない。こうした「間接支援」が失敗すれば、ECBの国債購入拡充などを求める声が再び強まりそうだ。

11年にはポルトガル、ギリシャ、イタリア、スペインなど債務危機に見舞われた国の多くで首相が交代し、「政治危機」の様相が強まった。12年の台風の目になりそうなのがフランスだ。4月22日が第1回投票の仏大統領選では、現職サルコジ大統領の苦戦が伝えられている。政権交代となれば、メルケル独首相との「メルコジ」と呼ばれる独仏連携にも変化が訪れる可能性がある。仏野党・社会党のオランド前第1書記は「自分が当選したら財政規律強化の新条約について再交渉を求める」と発言している。

12年は、欧州統合の基礎となった1952年の欧州石炭鉄鋼共同体の発足から60年。危機を乗り越えて結束を再強化できるのか、各国が内向き志向を強め、遠心力が働くのか。欧州にとって岐路の年になりそうだ。

(欧州総局編集委員藤井彰夫)

初割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン