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英BP、原油流出事故の補償基金払底 賠償額膨らむ

【ロンドン=松崎雄典】英石油大手BPが、2010年4月に発生したメキシコ湾原油流出事故の賠償金の増加に苦しんでいる。賠償を求める個人や事業主が増え、個々の損害額も当初想定より膨らんだ。200億ドル(約2兆円)の補償基金はほぼ払底し、BPは「不合理な支払い」と主張している。企業が不祥事の責任をどこまで負うべきか、米国内で波紋を呼んでいる。

事故で被害を受けた湾岸住民やホテル、漁業などの事業者、州や地元政府といった10万を超える原告がBPを訴え、昨年3月に和解。ところが、和解金がBPが想定した78億ドルから日増しに膨らんでいる。

BPは7月30日、賠償金の見積もりを96億ドルに引き上げた。和解後も原告の弁護団が被害者を広く募ったうえ、個々の損害の規模も従来の見積もりより増え、担当するルイジアナ州ニューオーリンズ連邦地方裁判所も認めた。

補償基金は10年に被害者に63億ドルを支払うなど、すでに大半の支払いが確定。今回の増額で197億ドルとなり、3億ドルを残すのみとなった。賠償請求期限は14年4月だが、賠償額が最終的に200億ドルを超え、BPは将来の利益から支払う必要が出てくる可能性がある。

BPは「損害を受けていない事業者にまで支払われている」(ボブ・ダドリー最高経営責任者)と批判。和解の内容が誤認されているとして、控訴裁判所に上訴している。

BPが賠償金や原油の回収、生態系の回復などに費やした資金は総額で424億ドル。さらに、BPは事故に全面的な責任があると判断すれば、最大176億ドルの民事制裁金を科され、経営が傾きかねない状況だ。

BPは米国の法律で定められた7500万ドルの責任上限額を取り払って費用を支払っている。ニューヨーク・タイムズのコラムニストは「今後、産業事故が起きてもBPのように適正に対処しなくなる」と原告弁護団や裁判所を批判した。弁護団は「BPは当初の見積もりが甘かっただけ。今になって支払いを抑制するためルールを変えようとしている」と反論している。

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