[FT]日本を去る製造業、空洞化の議論どこへ

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2012/8/31 7:00
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(2012年8月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

2011年10月、JVCケンウッドのタイ工場は洪水で水浸しになった。排水・消毒作業の間、同社は生産を横須賀に戻した。

■電力事情が国外脱出を加速

電気の使用制限や料金の上昇が日本企業の国外脱出を後押ししている(中部電力上越火力発電所で建設が進む発電設備)=共同

電気の使用制限や料金の上昇が日本企業の国外脱出を後押ししている(中部電力上越火力発電所で建設が進む発電設備)=共同

「生産を移転するしか選択肢はなかった」。グローバルな生産・調達業務を統括する落合信夫氏はこう語る。同社は技術スタッフの「中核」を日本にとどめていたという。

だが、12年5月までにタイ工場は活動を再開し、通常の顧客サービスは復旧した。世界初の家庭用ビデオレコーダーを作ったことで知られる、創業85年の同社にとって、自国での生産は「緊急措置」だったのだ。

売上高ベースで見た海外生産比率が約90%に上るJVCケンウッドは極端なケースだ。しかし、同社が特別なわけではない。経営者が他国の低いコストや安い通貨、強い需要に目を付けた結果、日本の産業基盤は着実に国内から失われてきた。

昨年の津波以降は、メーカー各社は福島原発危機が招いた電力の使用制限や料金上昇の影響を検討し、国外への脱出は勢いを増した。

8月31日に発表される7月の鉱工業生産指数は、復興関連の支出に押し上げられて前月比1.7%増とわずかに増える見込みだが、大局的に見ればリーマン・ショック後に生産の縮小は加速している。昨年は全国ベースの鉱工業生産指数が2.2%ポイント低下し、05年以降の累計下落幅は8%近くに達した。弱い統計値は今年に入っても続いている。

■空洞化の阻止に触れない政府

政府はこの変化の根本にある原因を受け入れているようだ。7月に発表された日本経済「再生」の新たな青写真は、歴代政権の頭を離れなかった日本株式会社の「空洞化」の阻止に全く触れていない。代わりに、環境技術やヘルスケア、農業など、より有望な分野に資源を振り向けることに重点を置いている。

政権幹部は「日本は多くの先進国が直面する問題の最先端にいるという認識だ」と語り、高齢化とエネルギー消費の制約を例に挙げる。

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