韓国ウォン安、所得流出拡大 輸入物価上昇し6割増 - 日本経済新聞
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韓国ウォン安、所得流出拡大 輸入物価上昇し6割増

韓国で輸出拡大を後押ししてきたウォン安の負の効果が膨らんでいる。輸入物価の上昇によって海外に流出した所得(交易損失)は、2011年に65兆8200億ウォン(約4兆7000億円)と前年比6割増えた。大企業の海外市場での躍進は国内の「豊かさ」には必ずしも結びついておらず、ウォン安志向をとってきた李明博(イ・ミョンバク)政権への不満が高まる原因にもなっている。

韓国銀行(中央銀行)が30日発表した11年年間の実質国内総生産(GDP、改定値)は前年比3.6%増となった。だが購買力を表す実質国内総所得(GDI)は同1.3%増にとどまり、実質GDPの伸び率を大きく下回った。

このギャップは貿易を通じて海外に流出した金額を示す「交易損失」によって生じている。ウォン安に原油などの資源や穀物の値上がりなどが重なり、貿易での輸入価格が輸出価格以上に上昇したことが交易損失を押し上げている。その分だけ国内の購買力は低下し、内需を抑制する要因になる。

11年の交易損失65.8兆ウォンは韓国の自動車最大手、現代自動車の株式時価総額(51.3兆ウォン)を大きく上回る規模。ウォン相場が1ドル=900ウォン台の高値圏で推移していた07年のほぼ5倍の水準に膨らんでいる。

08年2月発足の李明博政権は、大企業を中心とする輸出拡大を経済成長のエンジン役に据えた。価格競争力向上のために為替介入を繰り返すなどしてウォン相場をライバル国の日本や台湾などよりも相対的に安い水準で推移するように誘導してきた。

こうしたウォン安志向政策のツケの一端が交易損失の膨張に表れている。通貨安に支えられたサムスン電子や現代自動車といった主力輸出企業の業績が伸びるのと反比例する形で、国内では物価上昇による購買力の低下が進む構図が深まった。

韓国内では大企業の堅調な収益拡大の恩恵を受けているのが一部に限られ、GDPの伸びの割には「豊かさ」の実感は乏しい。むしろ11年末の家計負債は912兆9000億ウォンと前年比7.8%増え、過去最多を更新。中・低所得者層の生活資金手当が主因とみられ、名目GDPの伸び率を上回るペースでの拡大が続いている。

4月11日の投開票へ始まった総選挙の選挙運動では、最大野党の民主統合党が「1%の大企業の利益のために99%の庶民が苦しめられている」と李政権を強く非難。与党セヌリ党(旧ハンナラ党)と拮抗する支持を得ている。

セヌリ党も庶民層の支持獲得へ「国民生活重視」へ経済政策のかじを切っており、大企業重視の色合いが濃いウォン安志向の政策は曲がり角を迎えている。(ソウル=島谷英明)

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