2019年7月20日(土)

中国に今も息づく満鉄の「智」 東北部に残る膨大な資料
大連支局 森安健

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2013/5/2 11:00
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中国の新しい首相、李克強氏は世界銀行などが昨年まとめた500ページのリポート「チャイナ2030」を政策づくりの指針にしているとされる。金融セクターの強化、技術革新、生産性の向上――。今から100年前にも、似たように中国のあり方を研究し、提言を重ねた組織があった。日本の国策会社、南満州鉄道(満鉄)調査部。残った膨大な資料は、今も中国東北部の複数の図書館で静かに眠っている。満鉄の「智」の足跡を訪ね歩いた。

中国で最も多くの満鉄資料が残る大連図書館

中国で最も多くの満鉄資料が残る大連図書館

満鉄調査部は満鉄が発足した翌年の1907年に設置された。図書館に所蔵されているのは、日本最高のシンクタンクと呼ばれた満鉄調査部が書いたリポートやその参考資料として持ち込まれた文献で、数十万点に上る。厳重に管理されているものの、一般人にアクセス可能な資料もある。

東は黄海、西は渤海を見渡す小高い丘の上に建つ大連図書館(遼寧省)。ここの4階の古典管理事務室の奥に、一般人にはほとんど知られていないエレベーターがある。普段は鉄格子で覆われている。職員でさえ1人で乗ることは許されず、利用するときは必ず2人一組。監視カメラが見守る中、上層階の書庫に昇っていく。

そこにあるのは40万冊の満鉄資料だ。除湿機が24時間稼働し、湿度は一定に保たれている。「この図書館の最も大切な資料よ」と50代の女性館員は教えてくれた。大連図書館は中国で最も多くの満鉄資料が保管されている場所である。現在は整理中で公開されていないが、いずれ満鉄資料は電子化され、インターネット上で閲覧することが可能となる。

調査部の向かいにある旧満鉄本社は、いまは地元鉄道局のオフィス(遼寧省大連市)

調査部の向かいにある旧満鉄本社は、いまは地元鉄道局のオフィス(遼寧省大連市)

初代の満鉄総裁、後藤新平は「調査活動」を「鉄道経営」「沿線の街づくり」「産業開発」と並ぶ満鉄の四大業務と位置付け重視した。「実録・満鉄調査部」(草柳大蔵著)によると、ピーク時のスタッフは2125人、中核部隊は35歳前後。年間予算は800万円で、いまの物価に換算すると数十億円に上ったという。マルクス主義者も自由主義者も取り込み、日本が誇る最高の頭脳集団だった。フィールドワークが重視され、調査員らは「歩いて中国人を知る」ことを奨励された。資料の継ぎはぎのようなリポートは許されなかった。

終戦で満鉄が消滅した後、調査部出身者の多くは日本の政財学界で活躍し、その後の高度経済成長の礎を築いたとされる。調査部随一のロシア通で石原莞爾のブレーンと呼ばれた宮崎正義もそんな一人だった。

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