英、シリア軍事介入を断念 下院が議案否決
首相が意向

2013/8/30付
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【ロンドン=上杉素直】英下院は29日、英国がシリア軍事介入に参加する前提となる政府提出議案を反対多数で否決した。キャメロン英首相は「政府は議会の意思に従って行動する」と語り、軍事介入を断念する意向を示した。最大の同盟国である英国の離脱は米国にとって痛手だが、米政府は同日、議会にシリアのアサド政権による化学兵器使用の根拠を提示。軍事介入に踏み切る方針を崩していない。

英下院は政府が提示した英軍のシリア軍事介入を認める議案を賛成272、反対285で否決した。

英政府は国連が週明けにもまとめるシリア現地調査の報告内容を見極め、再度の議決を経てから軍事介入を最終判断する意向を示していた。アサド政権による化学兵器使用の明確な根拠を求める与野党の慎重論に配慮した二段構えの戦略を取った。その入り口でつまずいたことは英政府にとって大きな誤算だ。

キャメロン英首相は「英国民の意見を反映する英議会が軍事行動を望まないことがはっきりした」と下院の決定を尊重する考えを表明。首相は議会の承認が無ければ、軍事介入に乗り出さない方針を強調してきた。議会が方針を変えない限り、英国のシリア軍事介入は困難になった。

英国の直近の世論調査では半数がシリアへのミサイル攻撃に反対している。英政府にとって、世論の反対を乗り越えるのは容易ではない状況だ。

英議会では野党労働党が「軍事介入を認めるには説得力ある証拠が必要」(ミリバンド党首)と現時点での軍事介入の承認に強く反対。政府が29日に示した証拠が、アサド政権による化学兵器使用を断定するには説得力が足りないとの見方も議員の間で多かった。イラク戦争に参加したブレア政権の判断が近年、国内で非難を浴びている経緯もあり、与党内にも軍事介入に慎重論が残る。

シリアでの化学兵器使用疑惑に端を発した国際社会の動きは、英国が国連や主要国との調整役を務め、米仏との軍事介入に向けた先導役を果たしてきた。シリア攻撃の有志連合の一角を占めると目されてきた英国の離脱で、内戦状態のシリア情勢が混迷を深める可能性がある。2015年に総選挙を控えるキャメロン英首相は国内での指導力低下が避けられない。

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