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金融不祥事、米国でも後絶たず 民間の自助努力で投資家保護

年金資産の大半が消失した日本のAIJ投資顧問の問題と同様の金融不祥事は、米国でも後を絶たない。昨年破綻した米金融大手MFグローバルやネズミ講のマドフ事件で顧客資産の多くが失われた。ただ政府が進める規制強化に、民間は市場停滞や運用不振を招く展開への警戒を強める。被害救済の基金設立など投資家保護の自助努力で自由な市場の確保を探ろうとする動きも出てきた。

◆1000億円消失

失われた1000億円――。昨年10月末に経営破綻したMFグローバルに絡んでは、投資家が同社に預けた資金のうち約12億ドル(1000億円弱)の資金が依然、行方不明だ。AIJが"喪失"したのは年金資金で、MFグローバルは商品価格の変動に備え先物を利用していた農家や牧場主の資金だったという違いはあるが、小口資金が犠牲になった点は似ている。

投資家保護の根幹が揺らぐ事態に米国では2つの動きが進む。一つは官の規制強化だ。MFグローバル破綻のきっかけが南欧国債投資だったことから、米商品先物取引委員会(CFTC)は先物業者が顧客資金で海外の国債に投資することを規制する方針を決定。議会では銀行預金を一定額保護する「預金保険」に似た制度の創設模索の動きがある。

◆救済基金を設立

もう一つが民間主導の動きだ。MFグローバルのケースでは先物商品を上場するシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループが約5億5000万ドルの資金を破産管財人に拠出。同様の事件の被害に備え1億ドル規模の基金設立を決めた。

底流には「先物は危険」との認識が広がり政府・議会の過剰な介入につながると先物市場の縮小にもつながりかねないという警戒感がある。自主的に投資家保護の姿勢を示し、誰もが機動的に売買できる市場を確保したいというのが、CMEや自主規制団体の思惑だ。

2008年12月に発覚した過去最大規模の証券詐欺、マドフ事件の顛末(てんまつ)もAIJ問題と似た構図が見える。

「米取引所ナスダックの元会長が設立したヘッジファンド」が触れ込みのマドフに運用実態はなくネズミ講だった。失われた顧客資産は650億ドルだ。証券取引委員会(SEC)は03年に投資信託会社の情報開示強化などを進めたが、マドフ氏らのファンドはそれをくぐる形で膨張した揚げ句に事実上破綻。破産管財人が顧客資産を取り戻すための裁判は今も続く。

◆プロが不正監視

対応の遅れを批判されたSECは不正の内部告発に多額の報奨金を支払う制度の導入を決めた。だが期待は薄い。行き過ぎた規制でリスク投資が難しくなれば運用利回りが低下。多くの年金基金などが求める「年率8%」の確保も難しくなる。

運用会社などで実績を上げたファンドマネジャーがほとんどである大手年金基金や大学財団と違い、投資歴が豊富でない中小の年金基金はファンド投資などにも精通した年金コンサルタント会社と契約する例が多い。第三者的な運用のプロが、資金の委託先の不正などを監視しつつ一定の利回り確保に当たるわけだ。数々の金融不祥事に直面しつつも、米国の資産運用の現場はなお活力を失っていない。

(ニューヨーク

=川上穣)

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