米「国家宇宙政策」、宇宙産業の発展に重点
米政府は28日、宇宙利用の基本指針となる「国家宇宙政策」を発表した。改定は2006年以来でオバマ政権では初。安全保障を重視する方針を堅持しつつも「宇宙産業の発展」に重点を置き、各国と連携する姿勢を打ち出したのが特徴だ。オバマ大統領は声明で「宇宙での米国の指導力を強化する」と、米主導による宇宙利用の秩序形成に意欲を示した。
改定した政策は(1)透明性を拡大する(2)民生利用を促進する(3)平和利用はすべての国家の権利とする(4)主権・領有権の主張は認めない(5)米国だけでなく同盟国の人工衛星なども防衛する――の5つ基本原則を提示。「透明性」に関しては、2007年に中国が人工衛星の破壊実験に成功したことを踏まえて各国の「責任ある行動」と情報開示が重要だと強調した。
安全保障との関連では「国家の防衛活動は認められる」と国家防衛重視の姿勢を堅持する一方、米国や同盟国の安全保障を損なわなれば、国際社会で軍縮・軍備管理に関する提言が出た場合に「検討する」とした。宇宙の軍縮には応じない立場をとったブッシュ前政権より柔軟な立場だ。
民生利用の分野では、宇宙船の動力源などを念頭に宇宙での原子力利用開発の推進を明記。人工衛星による位置情報を特定する全世界的衛星測位システム(GNSS)などの開発で各国の政府・企業と連携する方針も示した。(ワシントン=弟子丸幸子)