2019年2月20日(水)

「強いインド」モディ新首相演出 パキスタン・米と関係改善へ

2014/5/28付
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【ニューデリー=岩城聡】インドで10年ぶりの政権交代を実現し、26日に就任したナレンドラ・モディ首相の外交が始動した。領土紛争を抱える隣国パキスタンとの関係改善を軸に、南アジア各国との協力を強化。米国とも安全保障や経済など多面的な関係強化を目指し、南アジア地域での存在感を強める中国をけん制する。ただ、安保政策の一環として示している核兵器の運用見直しは周辺国との新たな波乱要因になる懸念もある。

モディ首相は、26日の首相就任式にパキスタンのシャリフ首相をはじめとする南アジア地域協力連合(SAARC)の全加盟国の首脳かその代理を初めて招待。「地域のリーダー」を強調した。

27日にはカシミール地方の領有権問題を抱えるパキスタンのシャリフ首相と首脳会談を行い、冷え込む両国関係の「雪解け」を演出してみせた。両首脳は、領土や経済問題などを協議する外務次官協議を近く開くことで合意。モディ氏はシャリフ氏からのパキスタン訪問の要請を受諾した。

印パの首脳が相手国の首都を訪問することは珍しい。パキスタン側はモディ氏からの招待状を受領後、丸3日間にわたり政府内で討議。対印強硬派や軍部とも協議し、最終的には「新たな印パ関係の構築に向けた貴重な機会になる」とし訪印を決めたという。

インドがSAARCの「結束」を強調するのは南アジア地域での中国の台頭への警戒だ。中国は近年、パキスタンやスリランカなどに接近。軍事利用を念頭に港湾整備を支援し、インドを囲い込む「真珠の首飾り」戦略を進めている。

モディ氏自身、選挙中に「中国は領土拡張主義的な政策をやめるべきだ」と発言。所属するインド人民党(BJP)のマニフェスト(政権公約)でも、シン政権時代を「威厳喪失の10年」と批判。経済や外交、安全保障面で急速にインドが弱体化した時代だとした。

インドの防衛分析研究所(IDSA)のR・N・ダス上級研究員は「モディ政権は議会での単独過半数の強みを生かし、党の理念に基づいて『強いインド』を演出するだろう」と語る。

ただ、波乱要因もある。「核の先制不使用」をうたうインドの従来の核ドクトリンについてBJPは「現在の課題に適したものにするため」とし見直しに言及。周辺国との紛争リスクにつながると指摘する声もある。

モディ氏は、冷え切った米国との関係改善にも乗り出す。02年のグジャラート州でのイスラム教徒の虐殺事件を当時、州首相だったモディ氏が黙認したとして05年以来、米国政府は同氏への査証(ビザ)発給を停止してきた。ただ、オバマ大統領はこのほど、モディ氏をワシントンに招待することを発表し、ビザ発給停止を解除する構えを見せた。モディ氏としては、この機に米政府や米企業との関係を改善し、原子力面での協力強化や、外国直接投資の拡大を実現したいところだ。

「製造業の育成」を最大の公約に掲げるモディ氏は、中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国からの安価な製品の国内流入に懸念を示しており、関税の引き下げにつながる自由貿易協定(FTA)など貿易交渉については慎重ともいわれる。目下、交渉中の欧州連合(EU)とのFTA交渉や、15年末までの交渉妥結を目指す東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の協議にも影響を与えそうだ。

▼南アジア地域協力連合(SAARC) 経済成長や生活向上を目的に1985年に発足。インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、ネパール、ブータン、モルディブ、アフガニスタンの8カ国が加盟する。域内の関税をゼロに近づけることを目指す南アジア自由貿易圏(SAFTA)構想を掲げる。日本、中国、米国などがオブザーバー参加する。

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