ビットコイン死なず…米では利用広がる
通販やゲーム、企業が続々参入
【シリコンバレー=兼松雄一郎】仮想通貨「ビットコイン」の決済手段としての利用が広がっている。既存業者に比べコストが極めて低いことが背景。取引所の破綻で日本で普及に悲観論が広がるのと対照的に米国などでは関連ベンチャーが次々と登場し、勢いを増している。
オンライン ゲーム | ジンガなど |
ネット通販 | オーバーストック、アマゾン(ジンク・セーブ経由)など |
飲食店 | サブウェイの一部店舗など |
旅行 代理店 | チープエアー・ドット・コム |
弁護士 事務所 | クラウリーなど |
貿易金融 | トレルスなど |
カジノ | ラスベガスの老舗ゴールデンゲートなど |
スポーツ | NBAサクラメント・キングスの観戦・グッズ販売など |
ネット通販、ゲームなどソフトの購入、飲食店の支払い、貿易金融など投機以外の用途が広がっており、場所によってはビットコインだけで生活することも不可能ではなくなりつつある。
アマゾン・ドット・コム、ウォルマート、百貨店メーシーズなどで3月から割引購入代行サービスを始めたジンク・セーブはビットコインを受け付けており、米の多くのネット通販で間接的にビットコインが使えるようになった。
年初からビットコインでの支払いを受け付けたネット通販オーバーストックのビットコイン決済高は約2カ月で100万ドル(1億円)を突破。ビットコインで支払ったほとんどの人が新規の顧客で、大きな営業効果が出ている。全体の売り上げの約5%を占めた。
クレジットカードを持てない新興国の顧客を狙いネットゲーム大手ジンガも1月から一部のゲームでビットコインでの支払いを受け付けている。
米プロバスケットボール協会(NBA)のサクラメント・キングスのほか、ラスベガスのカジノ、旅行会社、飲食チェーン、サブウェイの一部店舗などでもビットコインを受け付け始めた。さらにクラウリー、ローズ・ローなどビットコインでの支払いを容認する弁護士事務所まで出てきた。
クレジットカードなど既存の決済サービスは5%前後の手数料を店舗側から取っており、負担が大きい。スクエアやペイパルは3%前後の手数料で既存サービスに戦いを挑んでいるが、ビットコインはさらに安く、1%以下の場合もある。貿易仲介トレルスは貿易決済での手数料を1%以下に下げることで普及を狙っている。
ビットコイン関連情報サービス会社コインデスクの調べでは、世界でビットコインを受け付ける事業体は4カ月前の4倍の約4千に急増した。決済手数料への値下げ圧力は強まっており、既存の金融産業を少しずつ脅かし始めた。少なくとも米ではビットコインは決済分野を中心に有望とみられており、ベンチャーファンドによる投資は依然活発だ。大手金融機関や米グーグルなどネット企業にいた優秀な人材が大量に起業し始めた。

ハッカー被害に端を発した取引所マウントゴックスの経営破綻は、従来指摘されてきたシステム上の欠陥に対応する必要な投資を怠ったことが原因とみられている。他の取引所は信頼性を強調し、サービスを競っている。
ビットコインを「幻影」と批判した著名投資家ウォーレン・バフェット氏に対し、ネットスケープ創業者のマーク・アンドリーセン氏は「技術の分からない人の意見だ」と反論している。
一般消費者の利用を促すため、サービス会社の技術力や信頼性を判断する監査や評価の仕組みが開発されつつある。
ビットコインは利用が始まったばかりの新しい技術。犯罪組織がビットコインの匿名性を利用してテロ資金の調達やマネーロンダリングに利用する可能性など課題は多い。当局の対応も追いついていないのが現状だ。ただ、今後、各国で法的な位置づけや課税の在り方が明確になれば、より普及に弾みがつくとの期待もある。
関連企業・業界