シリア化学兵器疑惑、国連調査 欧米は軍事介入視野
【カイロ=花房良祐】内戦が続くシリアの首都ダマスカス郊外での化学兵器使用疑惑を巡り、国連調査団が26日、初めて現地に入り、調査を始めた。ロイター通信が報じた。アサド政権が使用したとの証拠が見つかれば、米欧で軍事介入論が勢いづくのは必至。一方、同政権を支援し、国連安全保障理事会で拒否権を持つロシアは強硬論をけん制しており、具体的な証拠がどれだけ集まるかが焦点となる。
調査団の車銃撃

今回の化学兵器使用疑惑は21日、ダマスカス郊外で発生。反体制派はアサド政権側が毒ガスを使用し、数百人規模から1300人強が死亡したと主張している。事実ならイラクのフセイン政権が1988年に国内クルド人の反乱鎮圧で数千人を殺害して以来の大規模な化学兵器の使用となる。アサド政権側は反体制派が使用したと主張している。
ロイター通信によると、国連調査団の車列は26日、首都ダマスカスから現場に向かう途中で何者かによって複数回の銃撃を受けたが、負傷者は発生しなかった。その後、現場に到着して医師らから聞き取り調査したほか、負傷者や犠牲者の遺体から血液などのサンプルを採取したという。
ただ現場は激しい空爆と砲撃で破壊されたうえ、事件発生から時間が経過しているため「証拠はすでに消失している可能性がある」(ヘイグ英外相)と調査の実効性を疑問視する声もある。
米英仏やトルコなどはアサド政権が化学兵器を使用した可能性が高いとの見方を強めている。オバマ米大統領は24日にキャメロン英首相、25日にオランド仏大統領と電話会談。軍事攻撃を含む対応を協議したとみられる。米軍は地中海シリア沖の駆逐艦を増派。巡航ミサイルで攻撃する案も検討しているもようだ。
決議せず実行も
オバマ米政権はイラク戦争の泥沼化もあって、シリア情勢からは距離を置いてきた。だが化学兵器使用をかねて「越えてはならない一線」(オバマ大統領)としており、21日の使用疑惑を機に、米政府内で軍事介入策などの議論が一気に活発になった。
一方、国連安保理ではアサド政権を支援するロシアが、アサド政権に不利な決議についてこれまで拒否権を複数回にわたって行使。ロシアのラブロフ外相は26日も、国連安保理決議のない軍事介入は「重大な国際法違反にあたる」と警告した。
旧ユーゴスラビア・コソボ紛争では北大西洋条約機構(NATO)が99年、国連安保理の決議なしで空爆に踏み切った。26日のトルコ紙によると、シリア反体制派を支援するトルコのダウトオール外相は安保理決議がない場合、トルコを含む有志国連合が事態の鎮静化に対応する案が浮上していると明らかにした。36~37カ国が参加を検討しているという。
ヘイグ英外相も26日、安保理決議なしでも国際社会は「対応すべきだ」と述べ、軍事介入は可能との見解を示した。ただ国連軽視の介入には慎重な意見が根強い。