「未来勝ち取る」米大統領一般教書演説要旨
オバマ米大統領の一般教書演説の要旨は以下の通り。
今夜は第112議会におられる皆さんと新下院議長のジョン・ベイナー氏に祝意を伝えることから始めたい。我々は欠席しているギフォード議員の健康をお祈りする。
我々はアメリカという家族の一員だ。多くの人種や宗教が共存し異なる意見が出るこの国で、なお1つの人間として結びつきながら希望や信念を共有し、満たされるためのチャンスを持っていると信じている。
今後は我々次第だ。いま席をともにしていることではなく、明日、ともに何をするかによって決まる。我々はそれができると信じているし、しなければならない。我々をこの場に送った人々がそれを期待している。米国民は(中間選挙での)投票により、国内統治は(民主・共和)両党がともに責任を担うと定めた。新たな法律は民主と共和両党の支持を得て初めて成立する。我々は協力して前進する。さもなければ全く前には進めない。我々が直面している課題は党派や政治よりも大きいからだ。
いま重要なのは誰が次の選挙で勝つかではない。そもそも我々は選挙を終えたばかりだ。現在の重要課題は新たな雇用や新産業がこの国に根付くか、あるいはどこか他に行ってしまうかだ。米国民の努力や勤勉さが報われるかどうかだ。米国を単なる地図上の場所ではなく、世界の光たらしめてきた指導力を我々が維持できるかどうかだ。
躍進する準備は整っている。我々の大半が知りうる限り最悪の景気後退から2年がたち、株式市場は再び活気を見せ始めた。企業の利益は伸びている。米経済は再び成長している。
だが前進の度合いはこうした基準だけでは測れない。米国の前進は我が国民の成功、国民が得られる雇用と、雇用がもたらす生活水準によって測られる。良いアイデアをいずれ成長企業に育てたいと夢見る中小企業主の成功の可能性で測られる。我々が子どもたちによりよい生活を引き継ぐことができる機会によって測られる。それこそ、米国民が我々に取り組むよう求めているプロジェクトだ。(両党で)共に。
減税が決まったことで、米国人の給与は少し増えた。企業はその年にかかった新規投資の費用を帳消しにすることができる。両党によるこうした努力が経済を成長させ、昨年を上回る100万以上の民間雇用を増やすだろう。
だがすべきことはまだ残る。将来的に勝利するには、長い間起きている問題に挑戦していかなければならない。
今日これを見ている人々の多くは、都市部で仕事を見つけたりすれば良い仕事を見つけたと考えた時のことを覚えているだろう。学歴は必須ではなく、競争も限られていた。頑張って働けば妥当な給与や福利厚生、昇進を受けることができる。
だが世界は変わり、多く人は痛みを受けた。工場の窓は閉ざされ、通りには閉店した店がある。私は失職したり給料が減ったりして、ゲームの途中でルールが変わったと感じている市民の焦燥感を聞いた。
ルールは変わってしまった。たった一世代の間に科学技術の革新は我々の生活様式、仕事の方法、ビジネスのやり方を変えてしまった。
一方、中国やインドなどは、この新しい世界で国際的競争力を得るため、科学と数学に重点をおいた早期教育を行い、研究や新技術に投資している。中国には世界最大の民間の太陽光研究施設があり、世界最速のコンピューターがある。
世界は変わり、雇用を巡り現実に競争が行われている。だが、くじけることはない。過去数年の打撃を受けてもなお、多くの予想に反して米国経済は世界最大で最も繁栄している。世界最高の高等教育機関があり、世界中から学生が集まってくる。
米国は国民は自分の運命を自分で切り開くことができるという考えのもとにできた世界で最初の国だ。だから何世紀もの間、危険を冒して移民がやってくるのだ。米国では生徒は公式を暗記するだけではなく、「その考えをどう思うか。世界を変えるにはどうするか。大人になったら何になりたいか」などを考える。
未来は勝ち取ることができる。だが、ただじっと立っているだけではできない。ロバート・ケネディは「未来は与えられるものではなく、自ら成し遂げるものだ」と言った。アメリカン・ドリームはじっと立っていては維持できない。新時代の要求に応えるため、各世代が犠牲をいとわず、戦わなければいけない。
今度は我々の番だ。雇用と産業をかけた競争で、米国は革新に優れ、教育に優れ、国家建設に優れなくてはならない。米国をビジネスに最善の場所にしなければならない。財政赤字に責任を持ち、政府を改革する必要がある。そうすれば、米国は繁栄し、未来を勝ち取ることができる。
未来を勝ち取る第一歩は、技術革新(イノベーション)の奨励だ。
どの産業が成長し、どこに雇用が生まれるか、誰も確かな予測はできない。米国ができる、そして最も得意とするのは、創造性と想像力だ。自動車やコンピューターを発明し、エジソンやライト兄弟、グーグルやフェイスブックが生まれたのは米国だ。米国ではイノベーションはただ生活を変えるだけではない。イノベーションは我々の生活の手段だ。
歴史を通じて、政府が企業を支援するために最先端の科学と発明を提供してきた。
半世紀前、ソビエト連邦が人工衛星「スプートニク」の打ち上げによって宇宙への進出で米国に先んじた時、我々はどうすれば月への到達競争に勝利できるか見当もつかなかった。科学はまだその域に達しておらず、米航空宇宙局(NASA)は存在すらしなかった。
しかし研究と教育に投資した結果、我々はソ連を追い越しただけでなく、新たな産業と何百万という新たな雇用を創出する革新の波を解き放った。
数週間後、議会に予算を提案する。生物医学研究、情報工学、特にクリーン・エネルギー技術に投資し、米国の安全を高め、地球を守り、無数の雇用を創出する。
米国は過去200年以上、自己改革を繰り返してきた。同様に、今度はエネルギー政策の改革を始めた。科学者やエンジニアにただ資金を提供するだけではなく、彼らには最高の頭脳を結集しクリーン・エネルギーでにおける最難題の解決に挑戦してもらう。
さらに研究を進めれば石油依存から脱却してバイオ燃料へ移行し、2015年までには100万台の電気自動車が走る最初の国になれる。この革新を支えるため、現在石油関連企業に与えている数十億ドルを廃止するよう議会に要求する。過去のエネルギーに助成金をだすよりも、未来に投資しようではないか。
クリーンエネルギー分野の雇用創出は、ビジネスとしての市場が生まれることでのみ可能になるだろう。今夜、新たな目標の設定を提案したい。2035年までに米国における電力の80%をクリーンエネルギーで賄う。人々は風力と太陽光を求め、ほかの人々は原子力やクリーンコール、天然ガスを求めている。目標達成にはこれらのすべてが必要だ。私は民主党と共和党が実現に向けてともに働くことを促す。
米国が研究開発分野でリーダーシップを保つことが成功に欠かせない。将来に勝利し、米国内で雇用をもたらすイノベーションを生むには、我々は子供たちの教育という競争に勝つ必要がある。
次の10年、新しい雇用の半分近くで高卒以上の教育が必要になるだろう。だが学生の4分の1が高校を終えていない。数学と理科の教育の質は、ほかの多くの国に後れを取っている。学習への愛を教えるのは、まず家族だ。成功はハードワークと訓練がもたらす。
我々は教育支援制度を始め、教育分野への年間支出のうち1%に満たない金額で、40州以上で教育水準を向上させた。
次の10年、多くのベビーブーマーが退職する中、科学や技術、工学、数学の分野で新たに10万人の教師を準備したい。今夜演説を聴いている人の中で米国と子供たちの生活において違いを作りたい人がいれば、教師になってほしい。あなたを必要としている。
もちろん高校の卒業証書だけで教育レースは終わらない。すべての米国人がさらに高い教育に手の届くようにしなければならない。
もし子供たちの期待を高め、教育におけるチャンスを与えることができれば、私が2年前に設定した目標を達成できる。その目標とは10年後、米国が再び大卒の割合が世界でトップになるというものだ。
今日、何十万もの米国市民ではない優秀な学生が存在する。何人かは就労証明書を持っていない労働者の子供たちだが、彼らの両親の行動と彼らは何も関係ない。米国人として育ち、我々の国旗に忠誠を誓ったにもかかわらず、毎日、強制退去の恐れとともに過ごしている。海外からこの国の大学に留学してきた人々もいる。だが学位を取得するや、すぐに彼らを我が国と競争させるために母国へ送り返してしまう。これは意味がない。
我々は不法移民の問題に取り組むべきと信じる。私は共和党と民主党とともに、国境を守り、法を執行し、居住手続きのないまま暮らす数百万の人々に対応していく準備がある。この問題を巡る協議が困難で、時間がかかるということは承知している。しかし、今夜、努力していくことで一致しようではないか。そして、科学的な研究を担ったり、新たな事業を起こすことで米国を豊にすることのできる素質と責任感を持つ若者を国から追い出すのは止めよう。
明るい将来をもたらすための第3歩はアメリカを改築することだ。新たなビジネスを誘致するには高速道路や高速インターネット網によりヒトやモノの移動と情報の伝達を実現する最速かつ信頼性の高い手段を確立する必要がある。
我が国のインフラはかつて最高のものだったが、その地位からすべり落ちてしまった。韓国の家庭が利用できるインターネット網は我々よりも優れている。欧州各国やロシアの道路や鉄道への投資は我々よりも多い。中国は高速列車や新しい空港を次々に建設している。我が国のエンジニアたちは自国のインフラを「Dランク」と採点している。
我々は改善に取り組まなくてはならない。米国はかつて大陸横断鉄道網を建設し、農村に電気を引き、各州をつなぐ高速道路網を建設した国だ。こうした仕事はレールや舗装道路を敷いただけではない。
過去2年間、我々は21世紀の再建作業を始動した。これは衰退した建設業界に数千もの仕事を与える事業を意味する。今夜、私はこうした努力を倍増することを提案する。
壊れかけた道路や橋を修復する仕事にさらに多くのひとをあてるようにする。そのための給与や民間投資を保証し、政治家のためでなく経済にとって最適な事業を選択するようにしたい。
今後25年の目標は、自動車による移動時間の半分で済むような高速鉄道を80%の米国人が利用できるようにすることだ。旅程によってはそれは飛行機を利用するよりも速い旅を可能にするものだ。カリフォルニア州や中西部のルートはすでに建設中だ。
今後5年間で、次世代高速無線を98%の米国人に企業が提供できるようにしたい。それはインターネット接続の高速化や接続不良が減ることだけを意味するのではなく、全米をデジタル時代に導くということだ。それはアイオワ州やアラバマ州の田舎に住む農家や小規模経営者が世界中で製品を売ることができるようになるということだ。
技術革新や教育、インフラへの投資は米国のビジネス環境を改善し、雇用を創出することになる。しかし、我が国の企業の競争力向上をはかるには、成功を阻害する障害を取り除かなければならない。
長年にわたりロビーイストたちは特定の企業や業界に利するように税制の抜け穴を利用してきた。制度を利用するためにこうした税理士や弁護士と組んだものは全く税金を払わないということもできる。しかし、他のものは世界で最高の水準にある法人税率に苦しんできた。こんな状況はおかしい。変えなくてはならない。
だから今夜、私は民主党と共和党に税制を簡素化することを要請する。税制の抜け穴をふさぎ、公正な税制の土俵をつくろう。そして抜け穴をふさぐことで得る収入で財政赤字を拡大することなく、25年間で初めてとなる法人税率を引き下げを実現しよう。
我々は2014年までに輸出を倍増する目標を掲げた。輸出を増強すれば国内で雇用を創出できるからだ。すでに輸出は増えている。最近、インドと中国との間で米国内で25万人の雇用創出につながる合意に署名した。先月は、7万人の米国人の雇用を支える自由貿易協定で韓国と最終合意した。この協定はビジネス界と労働者、民主党と共和党からこれまで例がないような支持を受けている。上院にはこれを可能な限り承認するよう求める。
私は大統領に就任する前から、貿易協定を強化するべきだとの考えを明確にしていた。私が署名する貿易協定は米国人労働者を守り、米国人の雇用創出につながるものに限る。韓国との自由貿易協定(FTA)もそうだし、パナマやコロンビアとの協定締結でもそうするつもりだ。アジア太平洋地域及びグローバルな貿易交渉を続ける際も同様だ。
成長と投資の障壁を減らすため、私は政府による規制の見直しを命じた。ビジネスに不必要な負担を強いる規制があれば、それらを見直す。しかし、米国民を守るために必要であれば、常識的な規制を講じることにためらいはない。それは私たちが1世紀以上にわたってとってきたやり方だ。だからこそ私たちが口にする食品や水は安全だし、きれいな空気を吸うことができるのだ。速度制限があり、児童労働に関する法律があるのもこのためだ。だからこそ、昨年にはクレジットカード会社による、分かりにくい手数料の徴収などから消費者を守る手段を講じたし、その他の金融危機から保護する新たな規制を設けたのだ。そして、だからこそ、保険会社が患者につけ込めないようにする改革案を可決したのだ。
議員の中には、新たな医療保険改革法に不安を感じる者もいるとの噂を聞いている。まず私に言わせてほしい。「すべての状況は改善できる」と。もしも、この法律をよりよいものにできる考えがあるのならば、共に働いてほしい。中小企業に不必要な負担を与えるような不備があれば、直ちに修正する。それは今すぐに始めることが可能だ。
私が望まないのは、保険会社が既往症があるとの理由で保険適用を否定するような、過去の時代に戻ることだ。脳腫瘍を患いながら治療に保険が適用されなかったテキサス州のジェームズ・ホワード氏、従業員への保険負担で5000ドル以上を負担せざるを得なかったオレゴン州の中小企業経営者、ジム・ホウザー氏。こうした人々に「保険が適用されない」と伝えたくない。
今この瞬間も、この法律は高齢者に安価な処方薬を提供し、保険に加入してな学生に対し、親が加入している保険を適用させる機会を与えるものだ。だからこそ、過去二年間に繰り返してきた争いはやめ、前に進もうではないか。
そして未来で勝利するための最後の一歩は債務の山に埋もれないようにすることだ。今日の財政赤字は10年ほど前に始まった。金融危機が起き、信用を維持するため、雇用を守るため、人々の財布にお金を入れるためには必要な部分もあった。しかし、不況が最悪期を脱した今、我々は「歳入より歳出が多い」という現実を直視しなければならない。それは持続可能ではない。
そこで今年から5年間、政策支出の伸びを凍結し、今後10年間で財政赤字の4千億ドル(約32兆8千億円)削減を提案する。これは痛みを伴う措置を必要とする。既に公務員給与の今後2年間の凍結を決めた。地域の市民プログラムなどの削減も提案した。国防長官は何百億ドルもの不必要な軍の支出削減に同意した。
さらなる削減の提案も出ているが、最も弱い立場にある市民を犠牲にしないよう配慮せねばならない。削減する部分が本当に「ぜい肉」であるかどうかも確かめよう。イノベーション(技術革新)や教育への投資を刈り込むことは、例えてみれば飛行機に荷物を積みつつ、エンジンを取り除くようなものだ。
さて、私が提案した削減は政府の政策支出しか対象にしていない。政策支出は予算全体の12%にすぎず、これだけでは足りない。
私が昨年設置した財政再建のための超党派の委員会はこの点を鮮明にした。彼らの結論は、政策支出にとどまらず、国防、医療保険、税優遇、税の抜け道などあらゆる分野で無駄を削ることが、赤字削減の唯一の道だということだ。
医療保険のコストをさらに減らさなければならない。長期赤字の最大の要因でもあるメディケア(高齢者向けの公的保険)、メディケイド(低所得者向けの公的保険)を含めてだ。医療保険法を無効にすれば赤字は1兆ドル膨らむとエコノミストらは試算する。一方、共和党の提案を踏まえ、ばかげた医療過誤訴訟を抑制する手立てを考えたい。
足元を固めるためには超党派で年金を強化する方法を見つけなければならない。最も脆弱(ぜいじゃく)な現在の年金受領者や身体障害者を脅かさず、将来世代の受取額を大幅削減せず、かつ年金の額が証券市場の気まぐれに左右されない方法で進めなければならない。
本当に赤字を憂慮するなら、最富裕層2%の減税を恒久化する余裕はない。学校からお金を取り上げたり、学生から奨学金を奪い取ったりする前に、億万長者に減税を放棄するようにお願いすべきだ。富裕層の成功を罰するのではない。米国の成功を促進する政策だ。
税金に関して実施できる最善のことは税率を簡素化することだ。難しい作業になるが両党の議員が関心を示しており、私も仲間に加わる用意がある。
今こそ行動の時だ。上下両院、民主・共和両党が妥協し、仕事をなし遂げる時が来た。財政赤字を抑制するための厳しい選択をすれば未来を勝ち取るための投資が可能になる。
さらに一歩進めよう。手ごろな政府だけでは十分ではない。有能で効率的な政府を実現しよう。過去の政府で未来を勝ち取ることはできない。
情報化時代に生き、仕事をしている我々だが、最後に政府を本格的に再編したのは白黒テレビの時代だった。輸出に携わる省庁は12ある。住宅政策に関与する省庁は少なくとも5つある。そして私が頻繁に紹介する事例だが、サケが淡水の川にいる内は内務省、海水に出れば商務省に担当が変わる。スモークサーモンになれば、もっと複雑になると聞く。
さて、テクノロジーの活用による無駄の削減に関しては過去2年間で大きく前進した。退役軍人はクリック一つで医療記録を入手できる。何年も使われずに来た政府のオフィススペースを何エーカーも売却してきた。しかし、もっと大きく考える必要がある。政府を統合し、整理し、再編し米国の競争力を高める方法を今後数カ月以内に提案する。議会に提案を示し、法案が可決されるよう努力する。
今年は人々の政府に対する信頼回復にも取り組む。税金の使い道が分かるように、史上初めてそれらの情報をウェブサイトに載せる。ホワイトハウスがそうしたように、議会も議員の面会者リストをインターネットで公開することを促す。そうすればあなたが選んだ議員が、いつロビイストと会っているかが分かる。有権者は利益団体が法案に様々な利権を潜り込ませていないかを知る権利がある。だから両党に告げる。私は不自然な箇所付けが入った法案には拒否権を発動する。
21世紀の政府はオープンで有能でなければならない。手持ちの資金で運営できる政府でなければならない。経済は新しい技術とアイデアがけん引する。この新しい世界で成功するには改革、責任、イノベーションが必要となる。同時に外交に関しても新しいレベルの関与を必要とする。
雇用や企業と同様、新たな脅威や問題も国境を越えるようになった。東と西を隔てる単一の壁はなく、我々と競う単一の超大国は存在しない。よって我々は、敵がどこにいようとも打ち負かし、地域や人種、宗教を超えた同盟を築かなくてはならない。この仕事を始めることにより、今夜、米国の指導力は一新し、米国の地位は復興したと言える。
今年、我々はイラクに駐留する米軍の撤退を完了し、イラク国民と永続するパートナーシップを築く。米国の誓約は守られた。イラク戦争は終結に近づいている。
もちろん、(国際テロ組織)アルカイダとその仲間たちは引き続き我々に対する攻撃を企てている。(アフガニスタンでは)まだ厳しい戦いが控えており、アフガン政府は統治を改善する必要がある。しかし我々はアフガンの人々の能力を強化し、永続するパートナーシップを築いている。今年、我々は50近い国や地域と協力し、アフガニスタン人による指導体制への移行を始める。そして7月には米軍の撤退を開始する。
アルカイダの拠点は縮小している。我々はアフガン国境からアラビア半島、世界の隅々に至るまでメッセージを送ってきた。我々は軟化せず、動揺せず、あなたたちを打ち負かすだろう。
米国の指導力は最悪の兵器を安全に保管する努力にも見ることができる。共和、民主両党が新戦略兵器削減条約(START)を批准したことで、核兵器と発射装置の配備数は減った。我々が世界に呼び掛けたことにより、核物質が決してテロリストの手に渡らないように厳重に管理されるようになった。
イランが義務を果たすよう求める外交努力により、イラン政府はこれまでで最も強力で厳しい制裁を受けている。朝鮮半島問題では、同盟国である韓国と協力し、北朝鮮が核放棄という約束を守るよう迫っている。
我々はロシアとの関係をリセットし、アジアの同盟を強化し、インドのような国々との新たなパートナーシップを築いてきた。3月、私はブラジルとチリ、エルサルバドルを訪問し、北中南米の前進のための新たな同盟関係を築く。
チュニジアでは人々の意志が独裁者の権力よりも強いことを証明した。米国はチュニジアの人々を支持し、すべての人々の民主主義への熱望を支援する。
我々の目の前にある仕事について幻想を持つべきではない。学校教育の改革。エネルギー利用法を変えること。財政赤字の削減。これらはひとつとして容易ではない。これらの実現にはすべて時間がかかる。そして費用や詳細、法律の一字一句について議論していくほどより困難になるだろう。
もちろん、こうした問題がない国もある。もし中央政府が鉄道を必要としたら、鉄道が手に入る。いくつの家屋をブルドーザーで押しつぶしていくのは関係ない。もし新聞で悪い話を見たくないのなら、書かせなければいい。
だが時々、民主主義に対する論争やいら立ち、混乱があるものの、地球上でこの国を他国と取り換えようと考える人がここにひとりもいないことは分かっている。
我々は政策に相違点があるかもしれない。だが、我々全員は合衆国憲法に記された権利を信じている。我々は異なる意見を持っているかもしれない。だが、ここは挑戦すれば何事かをなし遂げられる地だという同じ約束を信じている。我々は異なる背景を持っているかもしれない。だが、この国は何事も可能な国だという同じ夢を信じているあなたが何者か、どこから来たのかは関係ない。
その夢こそ今夜、私があなた方の前に立てた理由だ。スクラントンの労働者階級の子ども(バイデン副大統領)が私の後ろに立つ事できた理由だ。父親が経営するシンシナティのバーの床を掃除していた誰か(ベイナー下院議長)が、地球上で最も偉大な国の議長を務められた理由だ。
夢とは何か。アメリカンドリームとは何か。それはアレン・ブラザーズを新たな時代に合わせた屋根会社への再生へと駆り立てたものだ。フォーシス・テックの学生に新たな技術を学ばせ、未来に向けた仕事へと駆り立てたものだ。そしてブランドン・フィッシャーという名の小さな会社の経営者の物語だ。
ブランドンは米ペンシルベニアで新たな種類の掘削技術を専門にする企業を起こした。昨夏のある日、世界を半周した先のチリの炭鉱で33人の男性がとじ込められたというニュースを知った。そして誰も救出法が分からなかった。
だがブランドンは彼の会社なら救えると考えた。そして「プランB」として知られることとなる救出法を考え出した。彼の従業員は徹夜で必要な掘削設備を製作した。そしてブランドンはチリへと向かった。
仲間とともに、彼は3、4日と眠らずに働き、地面に2000フィートの穴を掘り始めた。37日後、プランBは成功裏に終わり、鉱山労働者は助け出された。しかし、彼は脚光を浴びることを嫌い、鉱山労働者が救出されたときはそこにいなかった。ブランドンはすでに帰宅し、次のプロジェクトの仕事に戻っていたのだ。
その後、彼の従業員の一人が救助された人にこう言った。「センターロック社は小さな会社だが、大きなことを成し遂げる」。
我々は大きなことを成し遂げるのだ。
我々の建国当初から、米国はいつも夢見る普通の人の物語だ。そして、それは、我々が未来で勝利する方法でもある。
我々はこんな風に言える国だ。「私はたくさんのお金は持っていないかもしれないが、新しい会社のためにこんなすごいアイデアを持っている。私の家族には大卒はいないかもしれないが、私が家族で最初に学位を持つだろう。私は困難に見舞われている人々と面識はなくても、彼らを手助けすることができると思うし、そうする必要がある。地平線の向こう側にあるよりよい場所にどうやったら行き着くことができるか定かではないが、私は、そこに到達できると確信している。私は確信している」
我々は大きなことを成し遂げる。
米国の理想は生き続ける。我々の運命は、我々の選択にかかっている。そして今夜、建国から2世紀以上たっても、我々の未来に希望があり、我々の旅が前進し、国家の立ち位置が強固なのは人々のおかげである。
ありがとう、あなたに神のご加護がありますように。そして、アメリカに神のご加護がありますように。