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中国、軍幹部を大幅入れ替え 「胡VS江」闘争映す

制服組トップに初の空軍出身者 海空軍の連携重視

【北京=島田学】中国の軍を指導する新たな布陣が見えてきた。軍関係筋によると、制服組トップに当たる共産党中央軍事委員会の副主席に許其亮・前空軍司令官(62)の就任が固まった。同ポストはこれまで陸軍出身者が占めており、空軍出身者は初めて。近年進めてきた海空軍力の増強を今後も継続する意思を人事面でも鮮明にした。胡錦濤国家主席に近い幹部の昇進も目立ち、軍に強い発言力のあった江沢民前国家主席の力をそごうとする権力闘争的な動きも見られる。

人民解放軍は11月の共産党大会を前に、軍幹部の大幅な入れ替えを進めている。許氏が制服組トップに就任する背景には、中国が東シナ海や南シナ海で軍事的プレゼンスを拡大するうえで、空軍と海軍の連携を重視し始めたことがありそうだ。

2012年の中国の国防予算は前年実績比11%増の6702億元(約8兆5700億円)。軍の戦略策定にかかわる尹卓少将は、中でも海軍や空軍、第2砲兵(戦略ミサイル部隊)を中心に「予算の増加傾向が続いている」という。空軍出身の制服組トップの登場により、今後こうした傾向が一段と強まる可能性がある。

香港紙はもう一人の軍事委副主席に范長竜・済南軍区司令官(65)、国防相に常万全氏(63)が就くとの見通しを伝えている。

中国国防省は25日、人民解放軍の主な幹部人事を発表。総参謀長に房峰輝・北京軍区司令官(61)、政治工作を担当する総政治部主任に張陽・広州軍区政治委員(61)を充てる。ともに胡氏が10年に軍階級の最高位の上将に引き上げた幹部。共産党の次期指導部発足後も影響力を維持したい胡氏の思惑がうかがえる。

中でも房氏は胡氏の信任が厚いとされ、09年の建国60周年記念の軍事パレードでは総指揮官を務めた。このほか補給担当の総後勤部長には趙克石・南京軍区司令官(64)、装備担当の総装備部長には張又侠・瀋陽軍区司令官(62)を充てた。これまで70歳前後だった軍高官の若返りを図る。

国防省新聞事務局は25日、日本経済新聞の取材に対し、空軍トップの空軍司令官に馬暁天・副総参謀長(63)が就いたことを明らかにした。近く海軍や第2砲兵の幹部人事も公表される。

今後の焦点は、軍トップにあたり、現在は胡氏が務める党軍事委主席のポストの行方。次期指導部になってからも胡氏が影響力を維持するため同ポストにとどまるとの見方が強まっている。

胡氏は11月の党大会で党総書記職を、来年3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で国家主席職を、それぞれ次期最高指導者となる習近平国家副主席に移譲する。前国家主席の江氏の場合、02年に党総書記職を退任した後も約2年間、党軍事委主席の座にとどまって権力を維持した。

胡氏は一時、党総書記を退任すると同時に党軍事委主席からも退く意向とみられていた。ただ、党内の有力者だった薄熙来・前重慶市党委員会書記を4月に失脚させて以降、胡氏に対し、薄氏を支持する党内保守派からの突き上げがやまなかった。そのため党内では、胡氏が引き続き党軍事委主席の座にとどまって党の安定を図る必要があるとの声が出ていた。

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