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タイで暫定憲法公布 軍政、強大な権限維持

5月の軍事クーデターでタイの全権を握った国家平和秩序評議会(NCPO)の統治が新段階に入る。22日の暫定憲法公布を受け、暫定政権の樹立や改革案の具体化、新憲法起草に順次着手する。民政復帰に向けて来年10月に実施を計画する総選挙まで1年余り。NCPOは今年9月に発足する暫定政権を上回る強大な権限を保持する。

■いかなる命令も可能 「万が一のためで、簡単に発動はしない」。暫定憲法の起草にあたったウィサヌ元副首相は23日の記者会見で、NCPOの強権への懸念の声をこうかわした。

全48条からなる暫定憲法で物議を醸したのはプラユットNCPO議長(陸軍司令官)の権限を規定した第44条だ。国の安全保障を脅かす恐れがある場合、行政・立法・司法上のいかなる命令をも出せる。「安全保障」は治安や外交だけでなく、幅広い解釈が可能。命令時に政権などの同意はいらず、事後通告で済む。

暫定首相・政権を更迭する直接の権限こそないものの、NCPOの意に沿わない動きがあった場合、暫定首相の選出を担当する「国家立法会議」に勧告する形で、首をすげ替えられる。

過去に何度もクーデターを起こしたタイ国軍は"ノウハウ"の蓄積が豊富。暫定憲法も過去の条文に若干の修正を加えるだけのことが多い。実際、タクシン政権を転覆させた2006年は、暫定憲法がわずか12日後に公布されている。

それが今回は2カ月間を要した。NCPOの規定を詳述し、前回の39条から大幅に増えたためだ。背景には8年前の教訓がある。

■前回クーデターの「教訓」 06年のクーデターで全権を握った「民主改革評議会」(今回のNCPOに相当)は、スラユット元陸軍司令官を暫定首相に起用。評議会は名称変更して存続したが、その位置付けは政権の諮問機関に後退した。軍が統治の前面から退いた結果、改革は中途半端に終わり、民政復帰後に政情混乱を招く伏線となったとの思いが軍にはある。

かといって暫定政権を立てず「軍事政権」が行政を続ければ、反クーデター色が強い欧米の批判は必至。出した答えがNCPOと暫定政権の二頭体制だった。

NCPOが暫定政権の上位に居座る今回は、実際にはプラユット氏が引き続き絶対的な権力を握る。9月末に陸軍司令官の定年を迎える同氏には、暫定首相への就任観測もあるが、NCPOと暫定政権の力関係や利益相反を考えれば、その必要性は薄れた。

NCPO顧問のナロンチャイ元商業相は「前回クーデターはタクシン氏の影響力排除が狙いだった。今回は国家の様々な問題の解決を目指している」と言う。

タイでは暫定憲法に基づき、8月に国会に代わる立法会議、9月に暫定政権、10月には改革案を練る「国家改革会議」を相次ぎ発足。NCPOを加えた4機関の推薦による「憲法起草委員会」が来年7月までに新憲法を制定する予定だ。(バンコク=高橋徹)

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