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[FT]デジタル時代に報道機関が生き残る道

(2012年3月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

誰もが皆、報道機関の運命について思い悩んでいるわけではない。フィナンシャル・タイムズで最近、米国の新聞の苦境に関する分析記事を掲載したところ、オンライン上の読者コメントに、彼らがタス通信やプラウダの米国版と呼ぶものについて「レーニン主義のプロパガンダ」を書く「体制擁護者」を「厄介払い」できたとあった。

ハイテク企業に後れを取る報道機関

米国の2極化したメディア消費者の間でこうした見方は珍しくないが、ニュースの未来について思案している報道機関で一般的な基調は規則的ないらだちだ。無党派の調査機関ピュー・リサーチ・センターの「優れたジャーナリズムのためのプロジェクト」は今週、米国の報道機関の現状に関する冷静な年次報告書を発表した。

フォックス・ニュースからネイティブ・アメリカン・ラジオまで、あらゆる媒体を対象に調査した結果、報告書はモバイル時代に人々はより多くのニュースを消費するとの有望な調査結果を挙げた。一方で報道機関は情報の仲介を大手ハイテク企業にますます依存するようになり、これらの企業に一段と後れを取りつつあるとの懸念もあった。

アップルが持つ1000億ドルの現預金や800億ドル規模に達しかねないフェイスブックのIPO(新規株式公開)の評価額に衝撃を受けているコンテンツ企業にとって、この分析はなじみ深い。報道産業は自身のデジタルの運命をほとんどコントロールできていないのだ。

アップルやフェイスブックがライバルに

ピューの報告書によると、グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、その他一握りの企業が、消費者がコンテンツを消費する端末やOS(基本ソフト)、ブラウザー、メールサービス、ソーシャルネットワーク、ウェブプラットフォームを支配している。これらの企業はコンテンツ企業にとって便利な新規配信業者となると同時に、収入を奪い合う新たな有力ライバルにもなった。

グーグル、フェイスブック、ヤフーを筆頭とするハイテク企業5社がオンライン広告収入全体の3分の2を吸い上げ、アップルとアマゾンが携帯端末へのメディアのダウンロードを支配している。集約したデータを元に価値の高いターゲット広告を売るハイテク大手の力に対抗できるコンテンツ企業は存在しないと、ピューは付け加えた。

報告書の執筆者は、さらにこう問いかける。こうした難題に直面した今、フェイスブックのような巨大ハイテク企業が、ユーザーが評価するコンテンツ供給会社を存続させるために、ワシントン・ポストのような伝統メディアを買収するまで、あとどれくらい時間がかかるだろうか。

買収ではなく協力関係へ

息を殺して待つ必要はない。こうした議論は音楽業界にもあり、アップルが近く音楽レーベルを買うという甘い噂に業界が盛り上がることがある。だが、レディー・ガガの楽曲を所有してアデルのそれは所有しない状況からアップルの「iTunes(アイチューンズ)」がどんな利益を得るのか、説得力のある主張を展開した人はいない。

報道の世界でも、こうした買収が起きる可能性は低い。1つのコンテンツ供給源を押さえてもフェイスブックがどんな恩恵を得られるのか、やはり不透明だからだ。それでも最近の協力関係は、報道機関には裕福な求婚者を待つ以外にも選択肢があることを思い出させてくれる。

フェイスブックのツール「ソーシャル・リーダー」は、ワシントン・ポストからガーディアンまで、様々な新聞に採用されている。グーグルの動画サイトであるユーチューブは、ロイターの番組に資金を提供している。ヤフーはABCニュースから報道映像を得ている。売り上げ規模は小さいが、こうした取り組みは報道機関の収入源拡大を図る賢明な方法だ。

報道機関ならではの3つの強み

大半の報道機関はジャーナリズムの使命の裏で、常に読者や視聴者を広告主に売る商業事業だった。これはフェイスブックやグーグルがしていることと大差ないが、重要な違いが3つある。

まず、報道機関には、デジタル時代の新規参入者が集めたがるコンテンツを作るスキルがある。ニュース媒体は自社のコンテンツを顧客にとって価値あるものにすると同時に、ほかで手に入る大量の無料コンテンツと一線を画すことに重点を置かねばならない。同様に、他社サイトでのコンテンツ再利用では公正な対価を得られるようにする必要がある。

第2に、報道機関は地元の自動車ディーラーからフォードのような大ブランドまで、多くの広告主と長い付き合いがある。だが営業部隊は、自分たちは紙媒体の広告やテレビCMを売っているという考えを改め、グーグルやフェイスブックと同じ事業を手がけていることを認識しなければならない。

ピューの報告書によると、昨年デジタル広告の市場は23%拡大したのに新聞各紙のデジタル広告収入は6.8%しか増えなかった。また新聞系ウェブサイトは、価格の高いターゲット広告をほとんど活用していなかったという。大手報道機関は、伝統的な紙媒体やテレビ媒体のクロスプラットフォームの価値を宣伝し、デジタル収入の争奪戦で、もっとうまく競わなければならない。

お金を払うか、プライバシーを売るか

第3に、苦戦する新聞も含め多くのメディア企業は見過ごされがちな優位性を1つ持っている。配布や購読の料金を含めた二重の収入源を持つビジネスモデルだ。各社はこれを利用すべきだ。

ニュースへの課金に対する議論はいまだに大きく割れている(ちなみにフィナンシャル・タイムズは早くからデジタル課金を推進してきた)。だが、それを言えば、ターゲット広告の台頭に関する議論も同様だ。もしニュースに生き残ってほしいと思う消費者が、邪魔なターゲティング広告をたくさん受け取るのが嫌なら、ニュースにお金を払うしかないだろう。コンテンツが無料であることを望む人は代償を払うことになる。自分のプライバシーをもっと多くオンラインにさらけ出すのだ。

By Andrew Edgecliffe-Johnson

(翻訳協力 JBpress)

(c) The Financial Times Limited 2012. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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