2019年2月23日(土)

ムバラク元大統領を保釈 エジプト、病院に移送
イスラム勢力反発必至

2013/8/23 0:05
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【カイロ=久門武史】2011年の民主化運動「アラブの春」で退陣に追い込まれ、勾留中だったエジプトのムバラク元大統領が22日、保釈された。暫定政権への抵抗を続けるイスラム勢力の反発が強まるのは必至で、これまで暫定政権を支持してきた層からも疑問の声が上がる。23日にはイスラム勢力が再び大規模デモを計画しており、エジプト情勢は一段と複雑になってきた。

エジプトのムバラク元大統領が保釈され、ヘリコプターで病院に移送された(テレビ東京)

エジプトのムバラク元大統領が保釈され、ヘリコプターで病院に移送された(テレビ東京)

元大統領は22日午後、勾留先の刑務所からヘリコプターでカイロ南部マーディにある軍病院に移送された。勾留先には支持者が集まり、出所を歓迎した。

暫定政権は保釈に先立ち、非常事態宣言に基づき軟禁下に置くとの声明を発表した。健康状態が回復したとされる元大統領が公職に復帰する可能性はほぼないが、刑務所を出ることへの一般の反感は強い。公の場を避けるのは元大統領の身の安全を確保するためともみられる。

これに対しモルシ前大統領の出身母体であるイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」などは反発、集団礼拝日の23日に「殉教の金曜日」として大規模デモを決行すると表明した。1週間前の16日に「怒りの金曜日」と名付けて各地で開いた大規模集会では治安部隊との衝突で100人規模の死者が出た。再び流血の事態になる恐れがある。

一方、暫定政権の支持勢力でも「アラブの春」でムバラク政権打倒に動いた若年層や、政治経済の自由を重んじるリベラル派などから保釈に批判が上がる。独裁政権時代を嫌悪する層が離反し、一部が同胞団と連携する可能性もある。

11年の反ムバラク体制デモの中核だった若者組織「4月6日運動」の幹部ターリク・ホーリ氏は日本経済新聞の取材に「保釈は容認できない」と批判。「同胞団と共闘することも組織内では議論されている」と話す。政教分離を重視し、同胞団と敵対する若者組織「タマルド(反乱)」は22日、保釈を批判する声明を出した。

空軍出身の元大統領は1981年から30年間にわたる独裁体制を敷いた。11年の反政府デモ参加者を当局が殺害するのを止めなかったことや、汚職など複数の罪で起訴された。ただ裁判所が21日に保釈命令を出し、起訴された一連の事件すべてで拘束を続ける法的根拠が解消。検察も異議を申し立てなかった。殺害関与については、やり直し裁判が続いており25日に次回公判が予定されているが、元大統領が出廷するかは明らかになっていない。

今回の保釈は軍主導の暫定政権の意向が影響したとの見方が強い。7月の軍によるクーデター後、富裕層やリベラル・世俗派からは「同胞団の統治による混乱よりまし」などとして暫定政権を支持する声も多かった。しかし元大統領の保釈をきっかけに、根強い反独裁感情が刺激され、新たな混乱の火種をうむ恐れがある。

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