2018年12月11日(火)

対ロ制裁、欧州企業に影 新規投資を手控え

2014/3/23付
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【ベルリン=赤川省吾】ロシアの最大の貿易相手である欧州でロシアビジネスの停滞感が強まってきた。米国と欧州連合(EU)が追加制裁を決めたことで政治リスクを嫌う欧州企業は新規投資を手控え始め、インフラ整備などの国家プロジェクトへの参加も難しくなった。ロシアへの武器輸出も停止。混迷するウクライナ情勢が欧ロ双方の景気の下振れリスクとなってきた。

ロシアがウクライナのクリミア半島を編入したことを受けて、EUはロシア政府高官らの資産凍結を決めた。これが直接、実体経済に響くわけではないが、ロシアとの商取引はしにくくなる。

インフラ関連事業への影響は大きい。欧州企業は、EUが政治的に距離を置くロシアの国家プロジェクトへの参加が難しくなる。

例えばドイツはシュレーダー前首相時代にトップ外交でロシアから高速鉄道の車両製造を受注した。今年はモスクワの道路や地下鉄の近代化工事に商機があると見ていた。だが官民一体となってインフラを売り込むビジネス手法は当面、封印せざるを得ない。

クリミア半島沖の黒海では、欧州系企業などによる石油や天然ガスの開発計画に暗雲が漂う。計画を承認したのはウクライナ政府だが、周辺海域はロシアの実効支配下に入った。オーストリア系エネルギー大手OMVは「事業は当面のあいだ凍結する」と語った。

もちろんEUからの武器輸出は停止。火砲などを生産する独ラインメタルは最先端の軍事訓練施設、フランスは強襲揚陸艦をロシアに引き渡す予定だったが独仏政府は認可しない見通しだ。

影響は政府とは直接関係のない一般のビジネスにも及びそうだ。金融市場の混乱やロシア経済の低迷を警戒し、すでにロシア企業は守りの姿勢に入った。「契約解消が相次いでいる。契約件数が最大で20~25%減る恐れがある」(ドイツの農業用機械メーカー)

ロシアではオーストリアの建設大手ストラバックが買収計画を凍結、ドイツの流通大手は上場計画を延期――。政治リスクの台頭で欧州企業は「1~2年は新規投資を手控える」とオーストリア系ライフアイゼンバンクのエコノミスト、シュウァーベ氏は見る。

ただ有望市場を中印などの企業に奪われるとの警戒感は強い。新規投資は控えるが、既存ビジネスは続けて様子を見るという欧州企業は多い。

商取引の停滞が実体経済をどの程度押し下げるかは見えていない。いまのところ欧州経済よりも投資が急減するロシア経済への打撃の方が大きいという見方が支配的。政治情勢がどのように推移するかにも左右される。

一方、欧ロ対立の発火点となったウクライナでは経済の大幅な落ち込みが避けられない。首都キエフの中心街にある「独立広場」は依然としてデモ隊のテントが占拠。テントは自家発電装置を備え、長期生活が可能になっている。火炎瓶なども保持したままだ。

不安定な状態が続くと見てロシア以上にビジネスが滞る。2014~15年のウクライナの成長率の目減り幅は合計で20ポイントに達するとの予測がある。

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