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北朝鮮の核・ミサイル開発 巨額費用の謎

中国頼み 深まるジレンマ

人工衛星と称した長距離弾道ミサイルの発射に失敗した北朝鮮が、核も含めて開発を続けると宣言した。巨額の開発費用は、どうねん出するのか。北朝鮮の経済は中国依存を強めているが、頼みの隣国は新たな協力と引き換えに中国式の改革開放を求める。新指導者の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記は軍事力強化とともに住民の生活改善を図る必要もあり、出足から経済運営のジレンマに直面している。

韓国政府の推定によると1回の弾道ミサイル発射費用は約8億5千万ドル(約690億円)。大半の住民に1年間最低限の食料を配給できる金額だ。故金正日総書記は不法な武器輸出だけで年1億ドル以上の外貨を稼ぎ、核・ミサイル開発に多額の資金をつぎ込んできた。

米の支援白紙に

今回の発射で米国からの食品支援が白紙となり、食料不足が一段と深刻になると予想される。再度のミサイル発射や核実験の可能性が取り沙汰され、そうなれば国際社会が制裁を緩和する可能性はさらに遠のく。

今回の発射では「イランなどの関係者が北朝鮮入りしていた」(在京軍事筋)との情報がある。軍事協力や密輸をにらんだデモンストレーションと見られるが、国際社会の監視が強まり、以前に比べ武器輸出はしにくい。「第2経済」と呼ばれ、国内で優遇されてきた北朝鮮の軍経済も最近は民生分野への進出や経営多角化などで新たな収入源確保の道を探っているのが実態だ。

そこで望みをつなぐのが中国との経済協力。西側との交易が減り、いまや対外貿易の大半を中国が占める。近年は石炭や鉄鉱石の対中輸出が急増し、資源の切り売りで外貨を稼いでいる。

 15日の軍事パレードに登場したミサイルの移動式発射車両を中国が支援した疑惑が浮上したように両者の取引には闇の部分が多い。しかし、最近は内外の厳しい視線があり、中国も一方的な援助はしにくくなっている。代わって増えているのが企業の投資で、北京大学の金景一教授は「輸血方式から(経済発展につながる)造血方式への転換だ」と解説する。

中朝の駆け引きが本格化しているのが、共同開発する羅先(ラソン)と黄金坪(ファングムピョン)。境界の北朝鮮側に設けた経済特区だ。北朝鮮は体制への影響を懸念して中国式の改革開放に難色を示してきたが、特区の開発・管理のあり方でせめぎ合いを演じているのだ。

正恩氏の最高指導者就任と前後して公表された特区の関連法には「市場原理の順守」や企業の権利が明記され、専門家の関心を集めた。中国側の意向をくんだ格好で、羅先には中国式の農場をつくる計画もある。

ただ、北朝鮮が実際にどれだけ企業の裁量を認めるかは不透明。羅先の開発に関わる中国吉林省の王儒林省長は4日、鳥取市で記者会見し、特区の主役は企業で、市場経済原則が重視されるとクギを刺した。

中国も小出しか

正恩氏は大衆を前にした初演説で軍事力の強化とともに「人民が(食糧難で)二度と身を削らないようにする」と語り、人民生活の向上にも取り組む姿勢を示した。権力基盤の弱い正恩氏は住民に親しみのあるリーダーを演出している。しかし、軍事力の増強と、軽工業や農業の振興による生活改善が短期的に矛盾するのは明らかだ。

中国は新体制の発足に合わせた食料支援を実施する構えだが、受け渡しは「北朝鮮の出方を見ながら小出しにする」(北京の外交筋)との情報がある。北朝鮮側には対中依存が強まり過ぎることへの警戒もある。経済路線をめぐり、党や軍などの各機関に中国も交えた駆け引きが続く。(編集委員 伊集院敦)

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