ギリシャ財務相に大手銀幹部 新内閣発足
【アテネ=花房良祐】緊縮財政推進派を軸とする3党が連立政権樹立を合意したギリシャで21日、政府が内閣の顔ぶれを発表した。焦点の財務相には国内大手銀幹部を起用。約1カ月半にわたった政局の混迷はひとまず収拾した形だが、第1党以外は閣僚を出さない閣外協力はもろさもはらむ。連立合意は緊縮策の緩和が前提で、新政権は欧州連合(EU)との協議へ態勢固めを急ぐが、交渉の行方次第で与党の足並みが乱れる恐れもある。
新閣僚は同日中に就任を宣誓し、正式に新政権が動き出すことになる。EUなどの支援の条件となっている財政再建を所管する財務相には、国内大手ナショナル銀行のラパノス取締役会議長を充てる。
ラパノス氏はマクロ経済や税制などに詳しいうえにシンクタンク勤務の経験もあり、緊縮策緩和に関する対EU交渉で重要な役割を担うとみられる。国民に不人気な緊縮策に深くかかわる財務相への就任は与党議員から敬遠され、民間人の起用に至ったもようだ。21日開催のユーロ圏財務相会合に組閣が間に合わなかったため、暫定内閣のザニアス財務相が出席。帰国後に新財務相に交代する。
閣僚は第1党の新民主主義党(ND)所属議員が大半を占める構成。第3党の全ギリシャ社会主義運動(PASOK)と穏健な反緊縮派・民主左派は閣僚を出していない。新政権は最大与党のNDにPASOKと民主左派両党が閣外協力する構図となるが、各党が閣僚を出す本格的な連立に比べると基盤のもろさは否定できない。
波乱の芽になる可能性が大きいのは、3党間で微妙な立場の差がある緊縮策の緩和への対応だ。このため、3党は新政権の始動を待たずに対EU交渉をにらんだ準備を急ぎ始めている。
21日の組閣名簿発表前には3党の党首が会談、閣僚人事や緊縮策の見直し交渉の方針を擦り合わせた。20日夜には3党首と新旧財務相のザニアス、ラパノス両氏が協議し、ユーロ圏財務相会合での対応などを話し合った。
ギリシャは28日からのEU首脳会議でサマラス首相が緊縮策の緩和を求める方針。EUとの交渉で各党が納得できる「緩和」を引き出せない場合は与党3党の間で財政再建や構造改革を巡る足並みの乱れが出る可能性もある。