スタバ、豪から「撤退」 地場コーヒー文化に敗北
【シドニー=共同】米コーヒーチェーン大手スターバックスが、オーストラリアの直営店事業を地元企業グループに売却、"撤退"に追い込まれた。日本など世界各地に進出し成功を収めた「ビッグブランド」も、オーストラリアに根付いた独自のコーヒー文化に対抗できなかった。
スタバは2000年に最大都市シドニーなどに進出。しかし、08年までに1億豪ドル(約95億円)以上の損失を出し、84まで増やした店舗のうち約60の不採算店を閉めた。出店場所が悪いなど、市場調査が不十分とも指摘された。人口100万人に約1店舗は、先進国では低い出店規模だった。
シドニーやメルボルンなどの都市には至る所に小さなカフェがある。会社員らは出勤途中や仕事の合間、歩道に面したテーブルで食事したり、商談したり。値段は日本円で1杯300~400円と手ごろだ。
コーヒー文化は、1950年代にイタリアやギリシャなどからの欧州系移民が持ち込んだ。機械で入れるイタリア式のエスプレッソが基本で、英国式の紅茶文化をしのぐ存在になった。加えるミルクの泡がほとんどない「フラットホワイト」など独自メニューがあり、濃さやミルクの種類、泡の量で細分化。レギュラーコーヒーは「ロングブラック」と呼ばれ、呼称も独特だ。
シドニーのカフェ経営者、パネッタさん(26)はイタリア系。「毎シーズン新しい味を試みる手作り感覚や、客との親密な触れ合いがある」という。常連のピアースさん(39)は「イタリア系ならではの温かいもてなしや、充実した朝食、昼食が好きだ」と話した。
別の店を経営するギリシャ系男性(52)は「地元での焙煎が必須だ」と力説する。
スタバは、オーストラリアでコンビニ「セブン―イレブン」などを運営するウィザーズ・グループとライセンス契約を締結、24店舗を売却することが5月、明らかになった。同グループは「スタイルは変えずに再建する」としている。