2019年8月25日(日)

韓国、残業代算定ベース拡大 人件費膨らむ恐れ

2013/12/19付
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【ソウル=小倉健太郎】韓国の大法院(最高裁に相当)は18日、残業代などを計算するベースとなる「通常賃金」の構成範囲をこれまでよりも幅広くとらえるべきだとの判断を示した。このまま適用すると進出日本企業を含む企業側の人件費が大幅に上昇する。賃金上昇は消費拡大には寄与するが、労使対立を激化させかねない。人件費抑制を狙う企業側が賃金の引き下げで対抗し、労働組合がこれに反発する恐れが高まるからだ。

韓国政府は従来、企業の通常賃金にはボーナスは含まないという指針をとってきた。これに対し、自動車部品会社の従業員らが会社側と通常賃金の定義を争った裁判で、大法院は通常賃金の範囲をボーナスの固定給部分にも広げた。通常賃金が上がると、残業代や休日出勤手当なども増える。

政府は判決を受けて指針を改定する方針。この通りに適用すると企業の負担は兆円単位で上昇する。経済団体の韓国経営者総協会は、人件費が1年で合計14兆ウォン(約1兆4000億円)弱増えると試算している。

韓国メディアによると、通常賃金の範囲を巡る労使間の訴訟は、現代自動車など60社以上で進行中で、大法院の判断が踏襲される見込み。従業員らが新たに訴訟を提起したり、会社側に賃上げを要求したりする動きが広がる可能性も高い。

賃金請求の時効上限である過去3年分の差額分を従業員側が求める可能性もある。18日の判決は遡及請求は認められない場合もあると指摘したが、具体的な線引きは明確ではなく、企業側は戦々恐々としている。過去3年分も含めると負担はさらに膨らむ。

特に影響が大きいとみられているのが従業員数が多い自動車産業だ。業界団体によると、年間影響額は1年分だけで約2兆5000億ウォン。現代自動車や部品メーカーなどが影響を受ける。

大韓商工会議所は同日、「投資や雇用にも否定的な影響を与えるだろう」と遺憾を表明した。韓国経済研究院は同日、判決を受けた投資萎縮などで、2014年の成長率が0.1~0.2ポイント引き下げられるとの見方を明らかにした。

企業は賃金総額が大幅に膨らまないように、中期的には賃金体系を変えたり、賃上げを停止したりするとみられる。サムスングループなど一部を除くと企業業績はふるわず、賃金はただでさえ伸び悩んでおり、労使交渉は紛糾も予想される。

判決の効果は日本を含む韓国に進出した外国企業にも及ぶ。住友化学や東レなど韓国に生産拠点を持ち、従業員数の多い企業は影響を免れない。

政府も対応を求められる。判決後に関係省庁は対応を協議。「14年の労使賃金交渉が始まるまでには新たな判断を示したい」(雇用労働省)と表明。同省は「判決を尊重する」との姿勢を示しており、原則として大法院の判断を織り込む形で指針を変えるとみられる。

一方、賃金の上昇は結果的に購買力を高め、消費を刺激する効果も期待できる。韓国経済の成長は輸出がけん引してきたが、海外の景気変動に影響されやすい体質を改善するには内需の拡大が不可欠。朴槿恵(パク・クネ)政権も内需拡大を重要課題に挙げている。

ただ、政府指針に従ってきた企業側からは不満の声も上がる。ある経済団体幹部は「過去3年にさかのぼって支払いを求められるなら、その分所得が減るので法人税の還付請求が相次ぐだろう」と指摘する。政府に対し損害賠償請求をする企業が出る可能性もある。

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