突然の「預金に課徴金」、ATMに行列も キプロス
EUが金融支援の条件に
ユーロ圏は16日に固めた地中海の小国キプロスへの金融支援の条件として、同国の銀行の預金者から課徴金を徴収する異例の措置を発表した。一部銀行でATMなどを使って現金を引き出そうとする人の行列ができたとの報道がある。同国政府や欧州連合(EU)などへの反発が高まるのは必至だ。
ユーロ圏による債務危機国への支援で、銀行預金者に直接負担を求めるのは初めて。ユーロ圏財務相会合のデイセルブルム議長(オランダ財務相)は「すべての預金者に金融安定化のために貢献を求める」と説明した。
課徴金は国内外の預金者が対象。10万ユーロ(約1250万円)超の預金からは9.9%、それ以下は6.75%の課徴金を1回に限って徴収する。課徴金は全体で58億ユーロとなる見通しだ。
欧州中央銀行(ECB)のアスムセン専務理事は記者会見で、19日朝に銀行が営業を開始する前に口座から課徴金が差し引かれると説明した。キプロスのサリス財務相は「オンライン取引などで多額の資金の移動ができないようにする対策を取った」と述べたという。18日も銀行が休業するため高額の預金引き出しはできないもようだ。
同国は2月下旬の選挙で中道右派の大統領が当選して新政権を発足させたばかり。今回の課徴金に対して怒りの声が上がっているという。他の債務危機国でも同様の措置を警戒し、預金流出が進む可能性がある。
(ブリュッセル=御調昌邦)