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中国、世論にらみ強硬姿勢 尖閣付近領海に監視船

日本政府は厳重抗議

中国国家海洋局は16日、海洋監視船2隻を沖縄県の尖閣諸島(中国名・釣魚島)の周辺海域に派遣し、監視活動を展開した。監視船は一時、日本領海内にも侵入した。河村たかし名古屋市長の「南京事件」否定発言などで目立ち始めている日中間のきしみが、さらに広がる可能性がある。秋に共産党指導部交代を控えた中国側には、外国への強硬姿勢を示して求心力を高めたいとの世論対策の思惑もありそうだ。

日本政府によると、海洋監視船は16日午後2時半すぎに2隻とも日本の接続水域を離れ、中国方面へ北上しているという。

佐々江賢一郎外務次官は同日午後、日本外務省に中国の程永華駐日大使を呼び、海洋監視船の領海侵入などについて厳重抗議した。中国外務省の劉為民報道局参事官は同日の記者会見で、釣魚島の領有権を主張した上で「中国の領海内で定期的な巡航をしていたにすぎない」と反論した。

中国の海洋監視船が尖閣諸島周辺を巡航するのは2008年12月以来。中国側が強硬姿勢を示した直接的な背景には、今年に入ってからの尖閣諸島周辺の無人島命名を巡る日中間の応酬がある。中国のインターネットでは「政府は日本の勝手な振る舞いを許すな」などの書き込みが相次いだ。

海洋局は今回、監視活動の開始をすぐにホームページで公表。異例の対応は国内世論対策の一環とみられる。国営新華社も船上の電光掲示板に「我が隊は現在、釣魚島にいる」と映した海洋監視船の写真を公開した。

中国が派遣した海洋監視船は「海監50」「海監66」でいずれも11年に就役した最新型だ。中でも海監50はヘリコプターを搭載でき、中国保有の海洋監視船でも最大級だ。

これまでも尖閣諸島周辺では、中国農業省漁政局に所属する漁業監視船がたびたび航行。海上保安庁の巡視船が警告を発して追い返していた。ただ、今回は中国軍の影響力が及ぶとされる海洋局所属の海洋監視船。日本政府は警戒態勢を強め、首相官邸内の危機管理センターに連絡室を設置して情報収集に当たった。

今回、海洋監視船は尖閣諸島周辺の日本の接続水域内を航行し、一時的に領海内にも入った。接続水域とは領海の外側約22キロの範囲を指す。国連海洋法条約上は公海ではあるが、領海内への侵入や領海内での法令違反の防止を目的とした措置を取ることができると規定されている。

日中両政府は昨年12月に海上安全保障を巡る定期協議の開始で合意。玄葉光一郎外相は海洋分野の協力により「海洋関連機関同士の信頼醸成を進めている」と強調している。

ただ、中国では海洋進出を積極化すべきだとの声がますます強まっている。中国軍の羅援少将は6日、日本経済新聞などの取材に対し、海洋権益保護のために軽武装で領海警備に当たる「海岸警備隊」を創設すべきだとの考えを表明した。

今回の海洋監視船派遣には、こうした海岸警備隊創設を狙う勢力によるアピールの意図もありそうだ。

尖閣諸島を巡っては、中国軍で海軍の戦略策定に携わる尹卓少将が、中国の領有権を主張しつつ「中国の(妥協の余地のない国益を意味する)『核心的利益』には当たらない」と明言している。(北京=島田学)

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