なぜ火山灰で飛行停止?(Q&A)
Q 空港が閉鎖されているパリでも空は晴れ渡り、火山灰で視界が遮られているようにはみえない。なぜ航空機が飛べないのか。
A 火山灰は上昇気流で地表から6千~1万2千メートルくらいの上空に運ばれ、大量に浮遊しているとみられる。ジェット旅客機が飛行している高度に当たる。ジェットエンジンに火山灰が入ると高温で灰の成分が溶けてエンジン内部に付着し、最悪の場合はエンジンが止まる。速度計に火山灰が目詰まりし、計器が混乱する恐れもある。仏の空港では駐機中の機体のエンジンにカバーをかけて火山灰が入り込むのを防いでいる。航空機にとって火山灰は大敵だ。
Q 灰が滞留していない高度を飛行することはできないのか。
A 民間航空機が飛ぶ航路と高度は厳密に定められている。火山灰を避けてより低く飛ぼうとすると気流が安定していないので、長距離を飛びにくくなる。より高いところを飛ぼうにも、大気が薄くなり飛行ができなくなる。広い空域に火山灰が滞留していると、飛行は中止せざるを得ないのが現状だ。
Q 今回の噴火の規模は大きかったのか。
A 地元の報道などによると、火山の多いアイスランドでは過去にも同規模の噴火が複数回発生しており、今回が特に激しいというわけではないという。ただ、15日は風向きが悪く、噴煙が欧州上空に直接流れ込んだため航空機への影響が目立った。
噴煙の広がり具合は衛星などから観測しており、上空の火山灰が減れば航空機は飛行可能となる。世界気象機関(WMO)は16日、国連欧州本部での会見で「火山灰は数週間は大気中を漂う」と説明し、「火山の噴火が終わるまで航空機の飛行は再開できず、現時点ではメドはたたない」との見解を示した。
Q これまでに火山噴火が航空機に影響を及ぼした事例は。
A 頻繁に発生している。2009年と08年にはブラジルで火山噴火による飛行制限があった。米アラスカでは08年、火山灰の影響により2カ月間にわたり運航が混乱した。今回は航空路の密度が高く便数の多い欧州で発生したため影響が大きかった。
1982年にはインドネシア上空で、ジャンボ機が火山灰を吸い込み飛行中に4つのエンジンがすべて停止するという事故があった。このときはエンジンが再起動したため惨事を逃れた。
Q 気候への影響はあるのか。
A 火山灰が核になり雲ができれば太陽光を遮り、気温が下がる可能性がある。反対に雲が地表の熱の放出を妨げて気温を上昇させることも考えられる。火山灰の種類や高度など条件により影響は異なるため予測は難しい。
Q 火山灰は健康には影響がないのか。
A 噴火地に近い場所では火山灰が地上に降り注ぎ、人間が有害物質を吸い込む恐れがないとはいえない。世界保健機関(WHO)の担当官は「ぜんそくや呼吸器系の疾患を持つ人にとっては危険」と警告し、健康被害への監視を強化する方針を示した。「疾患を持つ人は家の中にいるか、外出する場合はマスクをした方がよい」という。(パリ=古谷茂久)