反米デモ暴徒化、アジアにも飛び火 イスラム中傷映像 - 日本経済新聞
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反米デモ暴徒化、アジアにも飛び火 イスラム中傷映像

(更新)

【カイロ=押野真也】イスラム教の預言者、ムハンマドを中傷する映像が配信されたことに抗議するデモが、イスラム諸国で暴徒化の様相をみせている。14日はイスラム教の礼拝日で、宗教心の高まりからデモが大規模化し、警官隊などとの衝突が続発。米政府は新たにイエメンに海兵隊を派遣するなど事態の収拾に躍起となっている。デモはインドネシアやバングラデシュなど、アジア諸国にも波及。沈静化には時間がかかりそうだ。

14日は金曜日で、イスラム教徒の礼拝日。一般的に、金曜日はイスラム教徒の宗教心が高まる傾向にある。エジプトでは、モルシ大統領の出身組織であるイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」が同日に「平和的なデモ」を実施するよう国民によびかけた。

治安当局はデモ隊が暴徒化することを警戒し、14日は午前中からカイロの米大使館周辺に装甲車などを配備。一部の若者が投石を始め、治安部隊が催涙ガス弾を撃ち込んで応戦するなど、衝突に発展。礼拝後の午後には参加者は数千人規模に膨れあがった。

イエメンでは首都サヌアにある米大使館が襲撃され、デモ隊と警官隊の衝突で死者が出るなど緊張が高まっている。米政府は大使館員の安全確保などを目的に、イエメンに50人程度の海兵隊員を派遣した。

ロイター通信によると、チュニジアでは一部のデモ参加者が暴徒化。首都チュニスにある米国人学校に放火した。金曜日は休みのため、生徒や職員などは学校にいなかったという。

米大使が殺害されたリビアでも東部のベンガジなどでデモが発生。米政府は治安維持のため海兵隊の派遣を決めているが、米兵が入国することに対する反発感情も盛り上がっており、今後、さらにデモが大規模化する可能性もありそうだ。

ペルシャ湾岸諸国ではイラクやイラン、クウェートなどで反米デモが起きているものの、サウジアラビアやカタールなどではデモ発生は報告されていない。これらの国々でも起きる可能性は否定できないが、デモが起きた諸国よりも政情が安定しており、治安当局の監視が行き届いていることが背景にありそうだ。

アフリカのスーダンでは、英独の大使館が襲撃されたほか、アルジェリアでもデモが起きる懸念が強まっている。

一方、アジア最多のイスラム教徒人口を持つインドネシアでは14日、首都ジャカルタにある米大使館の前に約100人の若者などが集まり、デモを実施した。治安部隊などとの衝突などは報告されていないが、デモは今後も続く可能性もある。

人口の約9割をイスラム教徒が占めるバングラデシュでは14日に米大使館の前などでデモが発生。イスラム教を国教と定めるマレーシアのクアラルンプールでも20人ほどが抗議した。

クリントン米国務長官は映像に対し、「受け入れられるものではなく、米政府とは無関係」などと沈静化に努めるが、広がった波紋がいつ収まるか見通せないでいる。

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