日米欧、中国をレアアース輸出制限でWTO提訴へ

【ワシントン=御調昌邦】オバマ米政権は12日、日本と欧州連合(EU)とともに、ハイテク製品などに利用されるレアアース(希土類)の中国による輸出制限について世界貿易機関(WTO)に提訴する方針を固めた。13日午前(日本時間同日夜)にも発表する。日本政府も13日、WTOへの提訴を「慎重に検討している」とした。米政府は通商分野での対中包囲網を強化し、内外に強硬姿勢を印象づける狙いもある。

レアアースはハイブリッド車や省エネルギー家電のモーターなどに不可欠なジスプロシウムやネオジムなど17種の元素の総称。ハードディスク基板の研磨剤などに使うセリウムや光学ガラスに使うランタンも含まれる。
世界的に埋蔵量が少なく、現在は生産コストの低い中国が世界最大の供給国で、日本は中国からハイテク製品向けに輸入している。中国は環境対策などの理由で輸出制限を強化し、昨年半ばまで市場価格が高騰していた。
今回のWTO提訴は米国が主導した。オバマ大統領は今年1月の一般教書演説で現政権は中国との間で以前に比べて2倍近い案件をWTOの紛争処理に持ち込んでいると指摘したうえで「さらに取り組む」との方針を打ち出していた。米大統領選を控え、中国に対して強い姿勢で臨んでいることをアピールする狙いもありそうだ。
一方、藤村修官房長官も13日の閣議後の記者会見で、中国のレアアース輸出制限について、米国、EUとのWTOへの提訴を「慎重に検討している」と明かした。
中国は2010年秋の漁船衝突事件をきっかけにレアアースを外交カードとして本格的に使い始めた。同様に輸出制限しているレアメタル(希少金属)に関しては、米欧がWTOに不当な制限として提訴。最終審に当たる上級委員会が、米欧の主張をほぼ全面的に認める報告書を1月末に発表している。
米国はレアアース問題について日本や欧州と水面下で情報や意見の交換をしてきた経緯がある。中国はあくまで環境対策によって輸出量が減少していると主張しており、今回の提訴に強く反発する可能性が高い。