欧州委「食品安全規制は影響受けず」 米とのFTAで
【ブリュッセル=御調昌邦】欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は、交渉開始で基本合意した米国との自由貿易協定(FTA)に関し、EUの食品安全規制が影響を受けることはないとの認識を示した。加盟国が実施している放送番組などに対する補助金なども変更を迫られることはないと指摘した。
欧州委のデフフト委員(通商担当)が12日の記者会見で明らかにした。欧州委は同日、加盟国に対して米国との交渉方針を示し、米政府との交渉開始に向けて正式な調整に入った。今夏には米国との交渉を開始したい意向も明らかにした。
デフフト委員は、EU内の関心事項である遺伝子組み換え作物に対する規制について「将来も変わらない」と明言した。米食品産業などはEUの食品安全規制の一部が貿易障壁になっており、FTA交渉で規制緩和を求めている。
さらに「加盟国は文化事業や放送番組などへの支援を続けることができる」と説明。ハリウッドの映像産業などを抱える米国は、EU域内の放送などに対する補助金などを国内保護策として問題視しているとの見方が出ている。
欧州委は、遺伝子組み換え作物や放送支援などは、米国とのFTA交渉でも譲らないことを加盟国に明確にしているとみられる。EUの一部でも米国との交渉で、貿易とは直接関係ない分野で政策変更を迫られるとの懸念が出ている。