ASEAN首脳会議、南シナ海問題に「深刻な懸念」表明 - 日本経済新聞
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ASEAN首脳会議、南シナ海問題に「深刻な懸念」表明

ミャンマーの首都ネピドーで11日に開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の議長声明が12日公表された。中国と一部加盟国との緊張が続く南シナ海問題について「深刻な懸念」を表明。名指しは避けたが厳しい調子で中国をけん制した。マレーシアなど南シナ海問題で中立を保っていた加盟国がベトナム支持を打ち出したのが一因だが、中国は反発を強めている。

ASEANは11日の首脳会議後に採択した「ネピドー宣言」で関係当事国の自制と法的拘束力のある行動規範の早期策定の必要性を盛り込んだ。12日の議長声明は10日の外相会議共同声明を踏襲し、「深刻な懸念」というより強い表現を選んだ。

首脳会議では南シナ海問題を巡る加盟国の温度差が表面化した。ベトナムのズン首相が「中国は恥知らずにもベトナム領海を侵犯し、深刻な違法行為を繰り返している」と激しく対中批判を繰り広げた。南シナ海では12日も両国の艦船が放水で応酬する場面があった。

これに対し、議長国ミャンマーのテイン・セイン大統領は「加盟国の結束」の重要性を強調。中国との関係が強いカンボジアやラオスも沈黙を貫いたもようだ。

一方、南シナ海問題で比較的中立的だった加盟国がベトナム支持を打ち出した。マレーシアのナジブ首相は「行動規範をすぐ締結すべきだ」と述べ、ベトナムの主張に理解を示した。マレーシアも中国と領有権紛争を抱えるが、これまで中国批判と一線を画してきた。

中国とのパイプ役を担ってきたインドネシアのユドヨノ大統領もベトナムに同調した。中越間の緊張が高まるなか、ASEANの団結を強く打ち出さなければ、加盟国間の亀裂が大きくなるとの判断が働いたようだ。

議長声明に対し、中国外務省の華春瑩副報道局長は12日の記者会見で「南シナ海問題は中国とASEANとの間の問題ではない」と反発。ベトナムを念頭に「一部の国が中国とASEANの友好協力関係の破壊をたくらんでいる」と批判した。

ベトナムでの相次ぐ反中デモについても「強く懸念している」と述べ、ベトナムにいる中国人の安全確保を求めた。

中国が米国の介入を警戒し、一時的に慎重姿勢に転じる可能性があるが、南シナ海を実効支配下に組み込むとの目標を変えることはあり得ない。当面はASEANへの経済協力をちらつかせてASEAN内部の親中派と反中派の分裂を誘い、再び攻勢をかける時機をうかがうことになりそうだ。

(ヤンゴン=松井基一、北京=島田学)

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