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米ヘッジファンド苦戦 金融緩和強化を予測できず

12年の投資収益率6%どまり

【ニューヨーク=川上穣】金融市場で存在感を誇るヘッジファンドの不振が続いている。2012年の投資収益率は約6%と、米国株の市場平均の上昇率(約13%高)の半分以下にとどまった。日米欧の金融緩和や、米国の「財政の崖」問題などに伴う変化を読み切れなかったのが原因だ。高い収益を求めてファンドに振り向ける資金を増やしてきた年金基金の思惑も外れ、予定利回りの引き下げなど対応を迫られている。

ヘッジファンドの運用成績が市場平均に届かないのは、09年から4年連続。米調査会社ヘッジファンド・リサーチ(HFR)によると、12年に苦戦が目立ったのが世界の為替や株式、債券に資金を投じる「マクロ戦略」のファンドだった。運用成績は通年でマイナスに沈んだ。「米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和強化を予測できず、その後の株高に乗り遅れた」。米西海岸に拠点を構えるファンド大手のトップはこう反省する。

ヘッジファンドにはかつて、1990年代の英ポンド売りで大もうけした著名投資家ジョージ・ソロス氏のように大胆なポジションで高い収益を上げる「巨頭」がいた。一般に買いと空売りを組み合わせ、どんな環境でもプラスの収益を目指す姿勢が注目を集めていた。

だが今は「(収益の源泉である)レバレッジ(借り入れ)も十分にできず、ファンド間の競争も激しい」。ソロス氏と並ぶファンド業界のスターだったジュリアン・ロバートソン氏は昨年、米メディアに後進の世代が直面する問題について語った。

一般に投資家から年率2%の運用手数料と、20%の成功報酬を受け取ることで知られるが、運用不振が長引き「法外な手数料はもはや正当化できない」(米プリンストン大のバートン・マルキール名誉教授)との声も漏れる。

 ファンドの不振は巨額の運用資金を振り向ける年金マネーの苦戦に直結する。年金運用の助言を手がけるタワーズ・ワトソンの調べによると、米年金基金ではヘッジファンドや不動産など「代替投資」の運用比率が11年時点で約25%。5年前の06年から9ポイント上昇。一方で株式は44%と、同16ポイント低下し、ファンドへの比重を高めてきた。全米最大の公的年金、カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)は代替投資の比率が3割に迫る。

米年金基金が、毎年想定する予定運用利回りは約7~8%。08年の金融危機後は米国など先進国で金利が歴史的な水準まで低下し、債券など従来の伝統資産だけでは安定した収益の確保が難しくなった。こうした中で、運用手腕の高さが評価されてきたファンドに頼らざるを得なくなっていた。

運用難に苦しむ年金基金にはヘッジファンドだけでなく、農地などの実物資産にまで投資する動きも広がる。土地を貸した農家から収入を得るとともに、将来的な農地価格の上昇を狙う。近年では道路や港湾などの公共インフラ事業に資金を振り向けるケースもある。

カルパースでは09年に1億ドルだったインフラ投資が11年には7倍に増えた。ただこうした投資先は、株式のように好きなときに売買できない流動性リスクを抱える。一定の運用利回りが見込めても、周縁の投資にとどまらざるを得ない。

運用成績の低迷を受けて、米イリノイ州教職員退職年金基金など予定利回りの引き下げに動く基金もある。この場合は年金加入者に積立額引き上げなどのしわ寄せが及ぶ。年金基金にとって避けたいシナリオだが、低金利やファンド不振で思い切った決断を迫られつつある。

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