2019年1月21日(月)

「政治家」スー・チー氏に試練 銅鉱山開発の是非判断へ

2012/12/11付
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ミャンマーで中国企業による銅鉱山開発に地元住民らが反対しているのを受け、政府は事業継続の是非を判断する調査委員会の委員長にアウン・サン・スー・チー氏を起用した。「中止」と判断すれば対中関係悪化を招き、「継続」なら国民の失望を買いかねない。国民人気に支えられた「民主化指導者」と冷徹な「政治家」のはざまで、難しい決断を迫られる。

ミャンマー中部の「レパダウン銅山」。スー・チー氏が視察で現地入りする直前の11月29日未明、開発中止を求めて居座るデモ隊のキャンプを警官隊が急襲した。催涙ガスや放水で強制排除に乗り出し、参加していた僧侶を含む数十人が負傷。政府が「やり過ぎた」と謝罪する事態を招いた。

それでも現場に到着したスー・チー氏は、強制排除への非難は口にせず、開発の今後も「国際的な信用にも配慮しないと」「私の判断が皆さんを喜ばせるとは限らない」と慎重に言葉を選んだ。

銅鉱山は2010年に国軍系のミャンマー連邦経済持ち株会社と中国の万宝鉱産公司が共同開発に合意した。ただ環境汚染や土地の強制収用があったとして、今年6月に反対派が現場周辺を包囲し、工事が一時停止に追い込まれた。先月下旬には2度目の大規模な抗議デモが起き、政府も対応策へ重い腰を上げた。

スー・チー氏が調査委員会を任せられたのは、下院の法順守委員長であり、また国会でこの問題を提起したのが同氏率いる最大野党、国民民主連盟(NLD)の所属議員だったからのようだ。

スー・チー氏の歯切れの悪さの背景には隣国との外交関係の悪化懸念がある。中国企業が手掛け、中止に追い込まれた事業には、イラワジ川上流の大規模発電事業「ミッソンダム」がある。昨年9月、「国民の意思」としてテイン・セイン大統領が開発中止を決め、国内外から喝采を浴びた。

ただ旧軍事政権時代の契約とはいえ、両国合意の計画を一方的に破棄するのは異例。中国側は不快感を示しつつ静観したが「2度目」となれば巨額の違約金請求など強硬手段に出る公算が大きい。

今回も国民感情は「中止」に傾く。「中国と国軍。2つのキーワードを国民は嫌悪する」。外交筋はこう分析しつつも「もし開発中止となれば今後の外資誘致に影を落としかねない」とみる。

一方で国民人気がよりどころのスー・チー氏は「民意」も袖にはしにくい。苦い経験もある。今年5月、西部で激化した仏教徒とイスラム教徒の民族・宗教対立で、イスラム教徒側に配慮する発言が仏教徒が大多数を占める国内で非難を浴びた。その後はこの問題に口を閉ざすが、今度は国内外から「逃げ腰」と批判され、対応に苦慮する。

調査委員会の中間報告書の大統領への提出期限は来年1月末。限られた時間で政治家としての能力と決断力が試される。

(バンコク=高橋徹)

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