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ウクライナ前首相、職権乱用罪で有罪判決 背景に政治対立か

(更新)

【モスクワ=石川陽平】ウクライナの首都キエフの地区裁判所は11日、ロシアとの天然ガス取引を巡り職権乱用罪を問われたティモシェンコ前首相に禁錮7年の有罪判決を言い渡した。欧州連合(EU)は有罪判決の背景にヤヌコビッチ現政権との政治対立があるとの見方を強めており、同日、判決を批判する声明を発表した。ウクライナが年内の交渉妥結を目指しているEUとの自由貿易協定(FTA)の行方も不透明になった。

ティモシェンコ前首相は首相在任中の2009年にロシアが求めるガス価格の引き上げに応じ、15億フリブナ(約140億円)の損害を国庫に与えたとして、ヤヌコビッチ政権発足後の10年に当局が起訴。11年8月には審理妨害で逮捕された。

ウクライナの裁判所は政権の強い影響下にあるとの指摘が多く、禁錮7年の判決も検察側の求刑通りとなった。前首相は刑期終了後、3年間公職に就くことも禁じられた。現地からの報道によると、判決では約140億円の賠償も命じられた。

ティモシェンコ前首相は11日の法廷で「判決は裁判官ではなくヤヌコビッチ大統領が下している」と批判し、控訴する構えだ。キエフ市内の地区裁判所周辺には前首相の支持者と現政権の支持者がそれぞれ多数集結し、緊張が高まっている。

ウクライナでは12年秋に議会選が予定されている。今回の判決には、10年初めの大統領選でヤヌコビッチ氏と激しく争い、有力政党「バチキフシナ(祖国)」を率いている親欧米派のティモシェンコ前首相の参加を阻止したい現政権の思惑が働いているとされる。

ティモシェンコ前首相への有罪判決について、EUのアシュトン外交安全保障上級代表は11日の声明で「EUとウクライナの相互関係に重大な意味を持つ」と指摘し、12月の最終合意を目指していたFTA締結の方針を見直す考えを示唆した。ウクライナがFTA締結に続く国家目標として掲げるEU加盟も一段と難しくなりそうだ。

EUとの関係が冷え込めば、ウクライナはロシアに再び接近を試みる可能性がある。ウクライナを自国の影響圏に取り込みたいロシアも9月24日の首脳会談で、ウクライナにガス供給価格を一部引き下げる譲歩をしたと報じられた。カザフスタンなど一部の旧ソ連諸国とつくる「関税同盟」への加盟も求めている。

ただ、ロシアでは現行のガス供給契約の合法性を疑問視した今回の有罪判決に「なぜ7年の判決を受けたのか」(プーチン首相)と困惑も隠せない。前首相への有罪判決をてこにガス価格の引き下げ交渉を進展させたいヤヌコビッチ政権だが、当面は対ロ外交でも厳しい立場に追い込まれる。

旧ソ連ではロシアに次ぐ約4500万の人口を持つウクライナは、低迷する経済の再建に向けてロシアとEUの間で難しい外交のかじ取りを迫られてきた。主要産品の鉄鋼や穀物の輸出先を確保するためにEU統合を目指す一方、エネルギー価格を抑える目的でロシアとの良好な関係が不可欠な事情もあった。

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