米政府、GM株の売却完了 損失1兆円超
120万人の雇用維持には貢献
【シカゴ=杉本貴司】米財務省は9日、保有する米ゼネラル・モーターズ(GM)の株式をすべて売却したと発表した。2009年6月の経営破綻から4年半に及ぶGM再建が完了した。GM株が低迷したため105億ドル(1兆円強)の損失が出た。一方でGM救済で120万人の雇用維持に貢献したとの調査もあり、オバマ政権のGM救済には功罪両面が入り交じる結果となった。
ダン・アカーソン最高経営責任者(CEO)は同日、「今日という一日は、これまでに何百日もの間、我々がGMを再び米国が誇れる会社にするために働いてきた日と、それほど変わらない」との声明を発表した。
米政府はGM救済に500億ドル近い資金を投入。GMは10年11月に再上場を果たしたが、株価はすぐに売り出し価格を下回り、北米販売の好調が鮮明になっても上値が重い展開が続いたため、売却で105億ドルの損失が出た。
一方でGMは破綻時に休止した工場を次々と再稼働するなど、雇用維持の面で果たした役割は無視できない。
GMの大株主には米政府とともに出資した全米自動車労組系医療基金(9.2%)、カナダ政府(7.2%)が依然として残るが、いずれも近い将来にGM株を売却する見通しだ。
GMが政府管理から脱したことで、米メディアの注目が集まるのが経営陣の入れ替えだ。これまでGM経営陣の報酬設定には米政府の許諾が必要だった。今後は役員の選定や報酬設定については、最終的には株主が諾否を下すものの、取締役会の裁量が大きくなる。
実質的に米政府が指名したアカーソンCEOは来年内にも退任するとの可能性が指摘される。後任には北米担当のマーク・ルース氏と、開発トップのマリー・バーラ氏のGM生え抜き副社長が有力視される。バーラ氏が就任すれば世界の自動車大手で初の女性トップ誕生となるだけに、GMの動向に注目が集まりそうだ。
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