2019年9月21日(土)

イタリア、財政再建予断許さず 新政権の枠組み白紙

2011/11/10付
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【ローマ=藤田剛】イタリアの政権トップに合計9年間君臨したベルルスコーニ首相が、欧州債務危機への対応に失敗し辞意表明に追い込まれた。国債価格の急落など市場の信用が大幅に低下。来年2月に解散・総選挙が実施される可能性も出てきた。その他の欧州諸国でも政権や首相の交代が相次ぐ。政権基盤は総じて弱く、各国の財政再建や構造改革が進むかは予断を許さない。

ベルルスコーニ首相の辞任表明後も市場ではイタリアの財政問題へ根強い不安

ベルルスコーニ首相の辞任表明後も市場ではイタリアの財政問題へ根強い不安

寂しげなアコーディオンの調べに20カ国・地域(G20)首脳会議(カンヌ・サミット)でメルケル独首相に無視されるベルルスコーニ首相――。イタリアの国営放送は8日夜(日本時間9日未明)の特集番組でベルルスコーニ首相をやゆする映像を流した。「クリーンではないが頼れる指導者」として一時は大衆の人気を集めたが、債務危機への対応に手間取り支持率は急低下。国民の間で辞任を惜しむ声はほとんどない。

ローマ市内の設計事務所に勤めるジョバンニ・ボニファッツイ氏(57)は「ベルルスコーニ氏が最初に首相に就いた1994年から17年間も悪夢が続いた」と振り返る。一方、建設コンサルタントのクラウディオ・マンモリーティ氏(45)は「国際的な信用を取り戻すために経済に精通したマリオ・モンティ元欧州委員が暫定的に首相に就いて危機を乗り切るべきだ」と主張する。

ベルルスコーニ首相は9日、地元ラジオに「辞めると言ったからにはすっぱりと辞める。今後は私欲を捨てて(財政収支の黒字化を目指す)財政安定法の成立に全力を尽くす」と語った。

しかし、辞任後の新政権の枠組みは白紙で、後継者も未定。連立与党内では首相が率いる自由国民のアルファノ幹事長やレッタ官房長官が有力視されるが、ともにベルルスコーニ氏の側近だけに野党がすんなり容認する可能性は低い。

野党では民主党のベルサニ書記長(党首)とキリスト教中道民主連合のカジーニ指導者が9日、イタリア国債の利回り上昇について協議した。「市場は危機的な状況で、沈静化のためにベルルスコーニ首相は一刻も早く辞任すべきだ」との意見で一致。与党は「首相は辞意を表明済みで、利回り上昇は別の要因」などと反論している。

与党は下院で過半数割れの状況にあり、首相の座を与党内で「禅譲」するだけでは政権は安定しない。最終的な首相指名権を持つナポリターノ大統領は右派の与党、左派の野党が合従連衡した連立政権を模索しているもよう。その場合の首相には経済問題の専門家のモンティ元欧州委員の名前が挙がる。

ただ、ベルルスコーニ首相は「議会はまひ状態で、前倒し選挙の可能性しか見えない」と連立構想にいまのところ否定的だ。解散・総選挙となれば、政策運営に長い「空白期間」ができ、財政再建の取り組みが遅れることは避けられない。

ベルルスコーニ首相は欧州連合(EU)に約束した財政再建策を暫定的な政令で実行する方針だった。しかし閣内から異論が出て法制定に転換。審議中の財政安定法案を修正して実現する構えを示している。成立の見通しが立たなければ、信用不安はさらに深まる。

経済の構造改革も喫緊の課題だ。イタリアでは正社員として雇用すると解雇は極めて難しく、労働市場は硬直的。若年層がそのしわ寄せを受け、4分の1が失業中だ。不満を募らす若年層は過激なデモに走り、これが経済活動を混乱させる悪循環を生んでいる。

一方、軽金属加工業を営むマリオ・パッシ社長(57)は「企業が負担する従業員の社会保険料が非常に重くなっており、新政府は一刻も早く解決してほしい」と訴える。政策の停滞には企業も不満を募らせている。

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