アジアTrend 高層ビルラッシュのマレーシアに官製バブルの足音
シンガポール支局・吉田渉

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2014/1/14付
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足元のオフィス市況は芳しくない。不動産調査会社DTZは「オフィス市況は安定しているが、先行きには不透明感がある」と分析する。現時点でも需要と供給はほぼ均衡しており、政府系オフィスビルの建設ラッシュが続けば、同国の不動産市場の需給を大幅にゆがめるおそれがあるとの見立てだ。

政府は「ウルトラC」を考えているとの見方がある。同国の大手企業・金融機関の多くが政府系で、これらの本社を新ビルに集約することで入居率を高めるアイデアだ。だが各社はすでに立派な本社を構えており、跡地が空洞化することには変わりがない。

外資の進出鈍化が鮮明に

マレーシアは賃金の高騰などを背景に外資系企業の進出鈍化が鮮明だ。外資頼みの成長に逆風が吹くなか、ナジブ政権が見いだした1つの「解」は公共事業の拡大だった。同国は比較的安定した経済成長を続けるが、政府支出に依存する部分が大きい。首都で加速するオフィスビル計画も、途切れない大型事業で建設など内需を底上げする狙いが透けて見える。

だが政府支出の拡大は財政の悪化という副作用を生んだ。同国の政府債務残高はすでに国内総生産(GDP)の55%に迫り、危険水域との指摘もある。財政が今以上に悪化すれば投資マネーの流出を招き、成長戦略が頓挫しかねない。

「摩天楼のジンクス」。こんな言葉が同国内でささやかれている。超高層ビルはバブル経済の頂点で計画され、完成とバブル崩壊の時期が重なるとの内容だ。米国人エコノミストが昨年に発表したリポートで「マレーシア経済はバブルで、近く崩壊する」と分析し、その傍証として使った。ペトロナス・ツインタワーの開業はアジア危機の真っ最中だっただけに、市民からは不吉な予言として受け止められている。

マレーシア首都で始まったビル建設ラッシュは「官製バブル」か。それとも新オフィスビルが外資を吸引し、再び高成長の軌道に乗るのか。その答えが出る日は遠くない。

「アジアTrend」は原則毎週火曜日に掲載します。
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