アジアTrend 高層ビルラッシュのマレーシアに官製バブルの足音
シンガポール支局・吉田渉

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2014/1/14付
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マレーシアで不動産市況悪化への懸念が高まっている。首都クアラルンプール中心部では政府肝煎りで大型オフィスビルの建設計画が相次ぐが、一部では「供給過剰」との懸念も出始めた。ナジブ首相の実弟である銀行家、ナジル・ラザク氏ですら、政府に再考を求める事態に陥った。ナジブ政権は新オフィス建設をテコに外資の誘致拡大をめざすが、財政悪化などリスクと隣り合わせだ。

アジア通貨危機で建設が止まったまま放置されたオフィスビル(クアラルンプール市内)

アジア通貨危機で建設が止まったまま放置されたオフィスビル(クアラルンプール市内)

首都中心部に「廃虚」

クアラルンプール中心部。大通り沿いに2つの「廃虚」が向かい合う。1990年代に建設が始まり、97年に起きたアジア通貨危機を受けて工事が止まったままのオフィスビルだ。塗装されていない外壁は雨風で茶色く汚れ、ビジネス街の中で異様な雰囲気を醸し出す。片方のビルはこのほど建設を再開したが、工事の足取りは鈍い。

アジア通貨危機の痛手を残すこの「廃虚」から自動車でわずか10分。中華レストランが集まる地域では新たな再開発事業が動き始めた。政府系開発会社が手掛ける「トゥン・ラザク・エクスチェンジ(TRX)」だ。1期工事は2017~18年に完成を予定。約30ヘクタールの広大な敷地に複数の高層オフィスビルを建設し、外資系金融機関の誘致の受け皿とする壮大な構想だ。

だが評判は芳しくない。「あまりにも巨大すぎる。どうすればオフィスが埋まるのか」(日系金融機関)との声は根強い。実はTRXに冠した「トゥン・ラザク」は、同国第2代首相でナジブ現首相の実父でもあるアブドゥル・ラザク氏の名前。ナジブ氏の強い思い入れを感じさせる。だがナジブ氏の実弟であるナジル氏ですら「入居者がどこから来るのか想像できない」と疑念を隠さない。

マレーシアは20年の先進国入りを掲げ、金融などサービス業が主導する経済への転換を目指している。TRXはその象徴だが、実は似たような計画も並行して動く。国営投資会社が15年の完成を目指す超高層ビル「ワリサン・ムルデカ」は100階建て超。完成すれば「ペトロナス・ツインタワー」を抜き、同国内で最も高いビルとなる。

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