スイス中銀総裁が辞任 夫人が外貨取引で利益
スイス国立銀行(中央銀行)のヒルデブラント総裁は9日、夫人が為替取引で7万5000スイスフラン(約600万円)の利益を得ていた問題の責任を取って辞任した。インサイダー疑惑を否定して続投の意思を示していたが、政界から辞任を求める声が強まっていた。1ユーロ=1.2スイスフランに事実上固定する異例の通貨政策を導入した同総裁の辞任で、今後スイスフラン相場に影響が出る可能性もある。
ヒルデブラント氏は9日にベルンで会見を開き、「夫人の取引について知らなかったが、それは自分の過失」と述べた。ヒルデブラント氏の総裁就任は2010年1月で、2年で職を辞すことになった。総裁職は当面、ジョルダン副総裁が代行する。
夫人はスイスフランがドルやユーロに対して急上昇していた昨年8月に40万スイスフラン分のドルを購入。9月にはスイス国立銀行がスイスフラン売りの無制限介入でスイスフラン相場を押し下げ、ユーロに事実上固定。夫人は10月にドルを売ってスイスフランを買い戻した。
スイス国立銀行は7日の理事会で、総裁ら幹部の資産運用ルールを厳格化することを決めた。
9日夕(日本時間10日未明)の欧州外為市場でスイスフランは1ユーロ=1.21スイスフラン前後で推移している。総裁の辞任で事実上の固定相場が崩れるとの観測が出て、一時スイスフラン高・ユーロ安に振れた。(ジュネーブ=藤田剛)