2019年2月21日(木)

仏「税率75%」避け富裕層脱出 ベルギー国籍、倍増126人

2013/1/9付
保存
共有
印刷
その他

フランスのオランド政権は所得税の最高税率を75%に大幅に引き上げる増税案を修正する方向で検討に入った。重い税負担を嫌って富裕層が外国籍を取得する「国外脱出」が相次ぐうえ、違憲判決も下ったからだ。中道左派のオランド政権は高所得者への課税で債務危機対応や所得の再配分を進める方針だったが、早くも政策の軌道修正を迫られた。

17年ぶりの社会党政権として昨年5月に発足したオランド政権は、富裕層から低所得者への所得再配分を掲げる。2013年からは2年間の時限措置で年収100万ユーロ(約1億1500万円)を超える個人の所得税率を、現行の約40%から一気に75%に引き上げる案を示した。

税負担の大幅増を嫌った富裕層は外国籍の取得に動き始めた。昨年9月にはモエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)のベルナール・アルノー最高経営責任者(CEO)がベルギー国籍を申請。有名俳優のジェラール・ドパルデュー氏は12月に「仏政府は成功を収めた人や、才能がある人を罰しようとしている」と批判するコメントを発表。今月6日にはロシア南部ソチを訪れ、プーチン大統領からロシア国籍を示すパスポートを直接受け取った。

企業経営者や富裕層の多くが脱出先に選ぶのが隣国ベルギー。12年中にベルギー国籍を申請したフランス人は126人と、前年から倍増した。ヒトやモノの自由な移動が認められる欧州では、日本に比べて外国籍取得に抵抗が少ない。ベルギーは税制で富裕層が優遇されており、「資産家の逃避が本格化している」(仏紙ルモンド)。ロシアでも富裕層の所得税率は10%台と低い。

仏エロー首相はドパルデュー氏らの外国籍取得を厳しく批判。富裕層らに理解を呼びかけたうえで、計画通りに所得増税を実施しようとした。ところが、今度は司法機関である憲法会議が増税に待ったをかけた。

野党の訴えで増税法案を審査していた憲法会議は12月末に「税の公平性に反する」として、違憲判断を下した。増税案は個人が対象で、夫婦のいずれかが100万ユーロの所得があれば75%が適用される一方、夫婦の所得がそれぞれ100万ユーロをわずかでも下回る場合には対象外となる。世帯収入が多いのに税負担が軽くなる可能性がある点が「公平性に反する」と問題視された。

仏政府は所得増税案を修正したうえで、13年の予算編成を見直す方針を表明した。オランド大統領は「富裕層に一段の負担を求めることは変わらない」と述べ、法案修正を小幅にとどめる考え。だが、公約である所得再配分を実現するための増税法案が、富裕層の国外脱出などによって修正を迫られた影響は大きい。オランド政権と経済界との摩擦も広がっている。(パリ=竹内康雄)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報